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第二十三話

 あたしが見上げた空。じじぃが指差す天空。それは、あたしも見た事がない光景だった。

「ここに居る中で見えておるのは、わしと嬢ちゃんしかおらんじゃろ。翼龍でさえ見えん。選ばれねば、見ようと努力しても見えんのよ」

 じじぃの呟きも遠くに聞こえる。

 堕龍との時、慎一郎が呼び出した妖精と似てる。けど、どこかが違う。前のは人型だった。っていうか、人型で出てきたんだろうけど、今、あたしが見てるのは雑多な形をしてる。蛇みたいなのとか小鳥みたいの、猫みたいのとか手乗りの馬みたいの。人型のも居るけど角があったり耳が異様に大きかったり。

 そいつらが空一面に隙間なく浮遊してる。

 よく星の数ほどなんて例えするけど、そんなんじゃ足りないよ。見える空が全てそいつらなんだから。見えないとこにも居るってことだろ。億や兆って数でも足りないんじゃない?

「じ、じじぃ…。こりゃ、なんだ?」

 とっても素直な感想。ってか、それしか言えないよ。だって、あたしの知識にはこんなの存在しないもの。

「嬢ちゃん、しっかり見なさい。彼等は嬢ちゃんを選んだんじゃ」

 選ばれた? 何に?って聞こうかとしたところに、あたしの真上から数人…数匹? のちっちゃいのが降りてきた。

 戸惑うあたしを尻目に、クルクルと周りを飛び交うと、傷を見て驚いたり股の間を抜けたりして遊んでいるみたいだ。

 そのうち一人…一匹だけ残してあたしの両脇に別れた。そのまま両腕を掴んで左右から持ち上げ始めた。上がった腕は真横より高め。なんか気の抜けたバンザイみたい。ちょっとだけ恥ずかしい。

 残った一人…一匹かな? どっちでもいいけど、そいつがあたしの胸あたりで腕を組んでいる。考え込んでるみたいだったけど、突然両手をあたしの胸の二つの膨らみに押し付けた。

「なっ!」

にをしやがるって繋がるはずだったんだよ。だけど、そいつ、真面目な顔してシーッて指を立てやがった。なんか逆らえない感じ。けど、やっぱり言っておけば良かった。

 次にそいつはあたしの胸の二つの…面倒クセェ…あたしのオッパイをフニフニ揉んだんだぜ。そこまでだって許せないのに、あたしの顔まで昇ってきて両手を広げて首を横に振りやがったんだぜ。なんじゃ、そりゃ! そりゃぁ、あたしの胸は豊満ってほどじゃないよ。だけどもさ、がっかりされたりモロ否定されるようなこたぁないぞ! 失礼千万にもほどがあるっちゅうの!

 んなことを言葉にしないで歯を剥いて顔で表現してたんだけど、もう一匹…もう匹でいいや…上空から降りて来て、失礼な奴を小付くと、またもあたしのオッパイまで降りてった。

 また揉む気かと思ったけど、今度の奴は慎重にあたしの胸辺りを片手で探り、最終的にオッパイの下、鳩尾よりちょっと上辺りに両手を添えてニコッと笑って見せた。

 とっても可愛い笑顔だったけど、次に起きたことにあたしの眼が飛び出さなかったのは奇跡だったろう。

 そいつ、宙でクルンと宙返りすると、まるで飛び込み選手みたいにあたしの胸に飛び込んできた。ぶつかる気なのかと思ったが、そいつはスルリとあたしの中に消えたんだ。

 はっ? ってなるよね。もちろんあたしもなった。けど、引き続いて起きたことは、はっ? じゃ済まされないっての!

 そいつがあたしの中に消えたのを合図のように、空一面を覆っていた連中が、一列の螺旋を描いて、消えた奴の後を追い始めた。目的地は、もちろんあたしの中に違いない。

 んぎゃ〜! 気持ち悪いよ〜。雑多な奴等が、次々にあたしの中に入り込んでく。両手で払おうにも、このチビちゃん達、どこにそんな力があるのかビクともしない。って言っても足は自由なんだから暴れようと思えば無理じゃない。

 あたしが無抵抗でいたのは、こいつらに敵意が感じられなかったこともあるけど、見た目が気持ち悪いってだけで、これといった不快感が無かったことが大きい。自分の胸に異物が入ってくのを見てるのって気色悪いでしょ? でも、感触も無ければ実感も無い。呼吸してるみたいなんだもん。

 急速なスピードで空一面の面積と質量があたしの中に入っていく。それと共に驚くべき変化もあたしの身に起き始める。

 まず最初の変化は痛みだ。徐々に身体の痛みが引いていく。引き裂かれた背中も半分切れた腕も痛みを感じなくなっていく。次が傷だ。背中は見えないから分からないけど、腕は如実に変化した。傷口が塞がっていく。切られた状況を巻き戻すように肉が繋がり皮膚がくっ付いてくる。弾けた血管も元に戻って綺麗な皮膚を作り上げた。恐らく背中も同様のことが起きているんだろう。全身が修復されていく。

 はっきり言ってこんなの有り得ない。ってか、有り得ちゃいけない。だって、いろんな世界の人々が、それこそ不眠不休で取り組んでる研究『魔力治癒』なんだから。それが、こんな簡単に出来たゃダメだろ。

 あたしも詳しくは知らない。っていうより、全く知らないに近い。極秘の研究だし、公表されたりなんかしないし。ただ、噂はあるのよ。技術的には可能らしいってのと、使う人がかなり限定されるらしいってこと。膨大な魔力を必要とするため溜められるだけの許容量がないと最初から無理でしょ。オマケにそれだけ使うと身体にも無理があるのか、使用後は意識不明になるなんてことも言われてる。全部、噂なんだけどね。

 それが魔力の気配すらなく出来ちゃうってのはなんなんだ?

 こんなこと、魔力無しで出来るのは…。

 空を埋め尽してた全部があたしの中に入ってしまった。全然変化無いんだけど、まぁ、傷は治ったけどね、それ以外に膨らむとか伸びるとかもない。両手を持ち上げてた奴らが最後に入り込むと、あの憎たらしい最初にあたしのオッパイを否定した奴だけが残った。

 そいつはあたしの右手を取るとじじぃの額に持って行った。熱い感じがうっすらとした黄金色の光りを伴って掌に浮かぶ。と、どうよ! じじぃの額の傷が治ったじゃん!

 あたしって、治癒魔力使えるようになったの?

 あっ! そんなら、そんならさぁ。

 じじぃの傷跡が消えるのを待って、突き飛ばす勢いで突き放すと、踵を返すのももどかしく走った。あの馬鹿はまだ倒れたまんまだ。

 うつ伏せに倒れてるのを両手で力任せに引っくり返して、慎一郎の胸の真ん中に両手を重ねて置いた。慎一郎が小さく「痛いです」とか言った…みたいだったけど無視した。

 治癒できるなら、こいつを一番に治してやりたい。

 一生懸命に願ったかというと疑問だけど、本心で思ってたのは本当。だって…こいつ死んだら、あたしは何処で暮らすのさ?

 じじぃの前例があるから、そんなもんなんだろうって予想してたのが悪かった。いきなり両手がフラッシュのように光ると熱い鉄板にでも両手を付けたみたいに熱くなった。う〜、それでも我慢して押し付ける力に体重まで掛けた。

「うげっ」って慎一郎が呻いたけど、今はあたしも必死。わりぃ、無視させて。

 効果は絶大。腹の傷がみるみる塞がって、土化色してた顔にも赤みがさしてきた。あたしの両手の光りも最初の勢いも無く、ぽあっとしたものだ。

 やがて萎むように光りが消える。苦悶の表情で堅く眼を閉じてた慎一郎が、一息大きく吸って眼を開けた。柔らかいいつもの笑顔付き。

 途端にあたしの視界が呆けた。う〜、なんなんだ、あたし。馬鹿みたい。

 そっと慎一郎の右手が上がってあたしの頬に触れた。ちょっとビクッと反応しちゃって、慎一郎の手が止まる。けど、そのまま優しく一度、頬を撫でてニッコリと微笑んだ。わかってるよ。まだ、口がきけるほどに元気にはなれないんだろ。死んでたっておかしくない傷だったんだ。動くのも大変だろうに。まぁ、ゆっくり休んでろよ。

 あたしの眼から一粒落ちそうになったのを、慎一郎の指がすくいとって離れた。

 さてと。どんな変化があたしの中に生じたのかは不明だけど、こうして五体満足、気力十分になったからには、ここから仕切り直しだ。やられた分は、ノシ付けて返してやる。

 未だに野次馬を追廻てやがる。それでも、数人が倒れてる。逃げる気力も尽きたんだろう。傷だらけの身体を荒く上下させながら、これからの運命を呪っていることだろう。

 待ってな。そんな悪趣味、すぐに止めさせてやるからよ。

 安心したのか再び眼を閉じた慎一郎から離れ、グッと精神統一。質の高い魔力を溜めたい。っても大差ないんだけど、気分の問題よ。ジワジワと光りもせずに魔力が溜って……いかない。

 眼が点になる。なんだ? いつもなら緩い暖かみが胸に広がって四肢に行き渡るのに、清んだ心は冴え冴えとして魔力のマの字も感じ得ない。

「今は魔力を使えんぞい」

 あ? トボケたじじぃの声が傍らでした。大股で歩いてくるわりに腰を曲げて老人を装うじじぃがフルフルと首を振ってやがる。

「なんで?」

 ちくっとイラって感じの声音になったけど、イラってしてるから仕方ない。

「今の嬢ちゃんには必要ないからじゃ」

 ケラケラ笑うように意味不明なこと言いやがる。魔力が無きゃ、あの悪趣味な嘴野郎とどうやって戦えっちゅうの。

「おい、どういう…」

 なんてあたしの声なんて無視して、じじぃは安らかな寝息を起ててる慎一郎の襟首を引っ掴むとズルズルと引きずってっちまった。慎一郎の手足がバタバタしてる。あいつ息できてるのかなぁ? 助かってもじじぃに殺されるかな?

 しかし、どうしたもんでしょ。魔力の使えないあたしなんて、たぶん慎一郎より弱い。並の女子高生なんかより弱い。…と思う。基本あたしの運動能力って、大半を魔力で補ってるから、無くなりゃ並以下ってことよ。

 とは言え、野次馬はドンドン倒れいく。その数も既に半数近い。若いのは、まだ体力に余裕がありそうだけど、中年の肉の着ぐるみみたいなおっちゃんは限界だろう。

 仕方無い。無理でもこっちに呼び寄せるか。なんて考えてると、あの失礼な奴が、あたしの剣の成れの果てベルトを持って飛んできた。

 ああ〜、ありがたいけどさ、魔力が使えないんじゃ、それって単なるベルトとしてしか役立たないんだなぁ。ま、受け取るけどね。

 変化は触れた瞬間だった。クネクネのベルトだったものが、予兆もなく硬質の剣へと姿を変えた。

 びっくり顔のあたしをせせら笑うように失礼な奴はあたしの胸に飛込んできて消えてしまった。なんだかキツネにでも抓まれてるみたい。

 まぁ、いいや。どのみち魔力無しじゃ破れかぶれ状態なんだし、武器があっても無くても同じことだしね。

 うっし! やるか!!

「おい! 悪趣味なこと、いつまでもやってんじゃねぇよ!」

 夢中になって残りの野次馬を追い掛け回す翼龍に怒鳴った。そりゃね、そっと近付いて斬り掛るってのも手だよ。でもね、あたしの今の力じゃ傷一つどころか当たんないって。ってことは、少しでもあたしに注目させて、あたしのところまで誘き出すことで野次馬を逃がすってのが最善策じゃん。

 翼龍の動きが止まる。ゆっくりとこっちに首だけを向ける。と、大きく嘴を開けて

「はぁ?」

とだけ発した。

 ここは強気に行かなきゃ。一度は命を捨てるまで覚悟したんだ。今更、何が怖いってこともないさ。

「は? じゃねぇよ。なんだ? あたしが死にそうでも見えたかよ? 残念だねぇ。治癒能力がお前だけの専売特許だと思うなよ!」

 おお、おおぉ、気持ちいい〜! 翼龍の奴、びっくり仰天じゃん。意識がこっちに向いたんで、元気な連中は逃げ出してる。けど、問題は動けない連中だなぁ。やっぱ、こっちに来させなきゃ駄目だな。

「もう一回、勝負できそうだぜ。怖じけづいたんなら裸足で逃げても構わないがな。あ〜、初めから裸足か?」

 挑発には安っぽいけど、単純な奴なら乗ってくるんだけどねぇ。

 翼龍は、驚きの大口を徐々に閉め、腰に手を当ててフンと一息吐いた。

「こいつは驚きだ。単純な人型には治癒魔力は不可能だと思ってたがなぁ。ここに実証型があったってわけだ。見識を改めなきゃなんないな。しかしだ、そんな魔力も無い生身の身体で俺様と何しようっての? マミおねぇさん」

 まぁ、当然と言えば当然だよな。魔力を使うかどうかは知らないけど、餌としては鼻が利くんだから魔力の有無くらいは一目で判断できるよなぁ。こうなりゃ、あたしから切り込むしかないかな?

 とりあえずだけど、剣を構えてみる。剣道でいう正眼の構え。これでどうしようってことになるんだけど、じっとしててもどうしようもないから、二度、三度と構えを上段にしたり立ててみたり…。これも進展はしないやね。

「馬鹿に馬鹿にされるってのは、いささか腹が立つもんだな。どこまで馬鹿に出来るもんか見てるのも面白いけど、そこで人間の解体ショーを見るってのも面白いんじゃないか?」

 あっ、くそ。乗ってこないばかりか、あたしを挑発する気でやんの。…挑発じゃないか。翼龍の奴、手近な親父を吊り上げると、ベロリと禍々しい舌を出した。

 ああぁ、もう、ムカつく。この身体でどこまで通用するかわからんけど、これ以上は無駄に死なせないぞ。

 あたしが焦れて特攻してくるって算段してるのはわかってる。それでもここで、見も知らない親父が餌食になるのを見てるのも出来ない。決意も決心もクソ喰らえだ。真っ向勝負で何が悪い!

 全力疾走がこれほど遅いとは情けない。幾ら足に力を込めて地を蹴っても進んでるように思えないくらい遅いよ。それでも翼龍まで数メートルまで近づいて剣を振るう。これまた、遅い。あたしの意識では、翼龍の腕を切り落とし、落ちてくる親父を蹴り飛ばして避難させてるはずなのに、剣はまだ振りかぶったくらいだ。案の定、腕を少しずらされただけで、剣は空を切って地に落ちた。途中で止めることもできねぇでやんの。こんなんで、どうしろってのよ、まったく。

「おいおい、それじゃぁ、遊びにもなんないぞ。先に喰われておくか?」

 だぁー! んなことは、あたしが一番良く知ってるっての。ああ〜、もう、いや!

 その時、あいつがあたしの胸からヒョッコリ顔を出した。危ないから引っ込んでろって言ってやろうとしたら、そいつがまたも両手を広げて首を振った。今はあたしのオッパイなんかどうでもいいだろ!

 下を向いたその眼前に、太い腕が現れたのは一瞬だった。翼龍の放ったものだと判断した時には、既に当たる直前だ。魔力のあるあたしなら、身体を半分ずらして避けた後、低い姿勢から翼龍と親父の繋がりを切り落とす。が、今は魔力が無い。当然、クリーンヒットを喰らってぶっ飛んじゃう。…はずだった。

 ドサリと眼の前に親父が落ちてきた。翼龍の手首がオマケで襟首にくっ付いてる。

 唖然としてるのはあたしだけじゃなかった。翼龍も動きが止まってる。一体、何が起こった? あたしがやったのか?

 我に返ったのは翼龍の方が早かった。あたしから跳ねるように後退して、呆然と自分の無くなった右手首を見詰めている。あたしもその動きで我に返る。確かに右手に切り落とした感触が残ってるけど、あたしの中の魔力は、未だ存在を感じない。胸のあいつは、まだ顔を出していた。今度はにこやかに微笑んでうんうんと頷いて、そのまま引っ込んだ。

「魔力が戻ったのか? いや、そんな気配はない。じゃ、今の動きは何だ? 一瞬、消えたように見えたぞ。俺様が知らない力が、まだあるってことか? …面白くないな…」

 そう言われても、あたしにもわかんないんだから、答えようもないわな。先刻のことを思い返しても、ただ魔力があったらこうするだろうってことをイメージしただけだ。イメージっても一瞬だったから、身体が勝手に動いたようなもんだけどさ。

 とにかく、少し時間が出来た。倒れてる奴等を何とかしないと。落ちてきてそのまま気絶してる親父の腕を掴んで移動させようと思ったけど、重くてビクともしない。すると、またあいつが顔を出して、フルフルと首を振ってきた。どうやら、あたしのオッパイのことを言ってるわけじゃなさそうだ。何かが間違ってるって言いたいらしい。喋れよ!

 う〜ん、何が違うんだ? 今のあたしにゃ魔力が無いってのが大きな違いだよな。魔力があればこうするってことが出来ないわけだから…。

 なんてこと考えてたら、そいつがまたも首を大きく左右に振る。あ〜? 何の真似だ? あたしに魔力があるとでも言うのか? そいつが首を横に振る。なんだよ? やっぱ、魔力ないんだろ? そいつ、首を縦に振る。じゃあ、魔力を溜められるようになったとか? そいつ、首を横に振る。んん? どういうことだよ。

「やはりマミお姉さんを先に殺しておかなきゃ目障りだな。これ以上、変な力に目覚められても困るし、何より飽きた。これを最後にしてもらおう」

 ありゃりゃ、本気にさせたかな? まぁ、今まで遊んでたようなもんだったから、遅すぎるくらいか。

 でも、今のあたしじゃ、瞬殺されちゃうだろうね。せめて魔力が使えりゃ、対抗することもできるんだけど。

 ん? 胸であいつが大きく頷いてやがる。なんだよ? 魔力使えないんだろ? 頷く、あいつ。じゃあ、魔力と同じ力でも出せるってのか? ……にっこりして大きく頷く、あいつ。

 なんだって? 魔力も無いのに、魔力と同じ力が使えるってのか? あいつは、大きく両腕を回してる。なんじゃ、そりゃ? もしかして、魔力以上の力って言いたいのか? あいつが頷く。そして、自分の頭を二度三度つついて胸の中に消えた。

 最後のは何だ? 頭で何かしろってことか? 考えろってことかな? あたし、あったまわりぃ〜かんなぁ。

「いくぞ。避ければ後ろの人間達があの世行きだ。きちんと受けろ」

 だぁ〜、こっちはまだ考え中だってのに、もう。翼龍は、グッと膝をたわめて力を溜めると、一気に地を蹴って向かってきた。左手の爪が大きく伸びて、四本の大鎌に変化する。その大鎌は、あたしの顔面を寸分違わぬ正確さで、握り込むように迫ってきた。




               つづく


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