3回戦
4/13
指摘して貰った箇所を変更しました。
「やっと戦えるな。あの時の決着をつけようぜ」
「…………」
「おいおいビビったのか?ま、王である俺を前にしてビビるのはしょうがないけどな」
「…………」
「おい、何とか言えよ。虚しくなってくるだろ」
「トーナメントをしくんだ」
「!?」
「昨日俺を馬鹿にした」
「……………」
「他にもあるぞ。俺に無理矢理酒を飲ませたとかな」
「わ、悪かったって」
「ふふふふふ。この恨みどう晴らすべきか」
「お、落ち着け。なんか怖いぞ」
「一つ賭けをしないか?」
「嫌な予感しかしないんだが」
「俺が負けたら全てを許す。俺が勝ったらトーナメントの事とか酒の事を女王様にチクる」
「そ、それだけは止めようぜ。な?」
「賭け成立だな!!」
「いつ成立した!!」
女王様の事を出されて焦るヴェードに一撃を加える為に身体強化をフルパワーでかける。先手必勝!
ヴェードの懐に潜り込み先ずは挨拶代わりのパンチを一発。当然左手から繰り出されたパンチは決まらないが、それは計算の内!
俺は体を捻りヴェードの襟を掴んで背負い投げをする。
突然の事で受け身が取れないヴェード。それもそのはず。俺が腰の剣を使うと思ってたヴェードにとっては素手で来るとは思ってもいなかっただろうし、この世界で投げ技など無いから投げられるなんて想像もしてなかったのだろう。
だが、流石は武神と言われる男だ。背中から叩きつけられたにも関わらず怯まない。寝転がったまま俺の顔面に向けて右足の蹴りまで加えようとしてくる。
俺は蹴りを躱す為に一度距離を取る。その間にヴェードは何事も無かったかのように起き上がった。
ヴェードの顔には笑みが浮かんでいる。俺の顔にもだ。楽しくて楽しくて仕方が無い。
それでわかった。先程まで言っていたのはお互いが遠慮などし無いで全力を出す為の建前に過ぎ無いと。
ヴェードが目で追う事すら困難なスピードで俺に迫る。正直その動きには俺の肉体はついていけ無い。見てからならな。
俺はヴェードの僅かな筋肉の動きなどを察知して次の動作を予想し、拳がくるであろう位置から移動する。一撃目は難なく躱す事が出来る。だが、ヴェードは体をこちらに向けてラッシュを放ってきた。
ヴェードは拳を放つ。
右から左、左からから右。時にはフェイントを加え、足元に意識が向いてい無い時には蹴りを放つ。一つ一つの動作が滑らかに繋げる。それによって一撃避けるごとに僅かだがルイスの体制は崩され、またそこに一撃がくる。体制が更に崩れる………それの繰り返し。
経験を積んだからこそ出来る技で、地味な技だがこれが出来るか出来無いかで勝負が決まる。
舞うように動く二人の姿はとても美しく見るものに感嘆の溜息をつかせる程だ。だが、それは次の一撃で終わる。
ルイスが完全に体制を崩し、そこにヴェードが身体強化した拳を振り下ろした。避ける事のでき無い一撃。それは完全にルイスの、顔面を捉える。
捉えた筈なのだ。だが、おかしい。手応えが無い。
その代わりに何故か後頭部に強い衝撃が加えられる。攻撃された?何故だ。俺が攻撃していた筈なのに気がつくと何故俺は地面に倒れている。
攻撃を受けた筈のルイスはピンピンしている。俺は少し動揺するが手を止めるわけにはいかない。
「王の牙!」
この技は虚の技だ。
殺気をのせた威圧によって相手には本当に拳が迫っているように錯覚させる事が出来る。ヴェードはその虚の拳をガードしようとするルイスのガードの無いところに実の拳を叩き込む筈だった。だが、ルイスは虚の拳になど全く反応せずに再びヴェードの懐に潜り込み蹴りを放った。
ヴェードは殆んど反射的にその蹴りをガードする。
ガードの上に放たれた蹴り。それは想像していた以上に重く鋭い蹴りで、ヴェードのガードを吹き飛ばし腹に一発入れた。
「がはっ」
くの字に折れ曲がり空中に投げ出されたヴェードはその一撃で殆んど意識が飛びかけていた。たが、ルイスの追撃がくるのが薄れていく意識の中でもわかったヴェードは捨て身の一撃をルイスに放つ。相打ちになるかと思われた。
「おおおおおおお」
「うらぁぁぁぁ」
ヴェードの拳がルイスの顎を掠め、ルイスの拳は一撃目に入れられる筈だった腹に突き刺さった。
ヴェードは腹に突き刺さった一撃と先程の一撃によりダメージの限界が来て地面に倒れこむ。
ルイスも最後の一撃によって脳が揺さぶられ地面に伏した。
どちらが先に立ち上がるのか。
会場は静まり返り、その瞬間を待った。
数秒後、震える膝を両手で押さえながらも何とか立ったのはルイスだった。
神様こんなの頼んでないよ(仮題)の方もよろしくお願いします。