二回戦後
会場は騒然としていた。それもそのはず、憧れのSSランク冒険者であるアルバードを駆け出しの年端のいかない少年が圧勝してしまったからだ。
未だにざわついている会場を見渡した少年は━━
ああ、今日も籠城しなきゃいけないのか.....
遠い目をして現実逃避をしていた。
その日、一般人や冒険者、宿屋の店主が一目拝もうとし、一度断ったはずの宮廷魔道士の方々が籠城しているルイスに押しかけてきたことは言うまでもないだろう。
三回戦、今日の天気は晴天!ヴェードを血祭りにするには絶好の天気だ!!
ルイスがヴェードにここまで殺意をまき散らしているには理由があった。
昨日、アル爺に勝利したルイスはすぐに宿に戻ろうとしたのだがローブを着た数名の方々に行く手を阻まれた。
なんだ?戦闘か?身構えるルイスをよそに、そのローブの方々は一斉に土下座をした。
...........は?
「レイミア様!お願いです。私たちを弟子にしてください!!」
「え、ち、ちょっと待って。え?」
「先ほどの戦いを見て我々は感銘を受けました!!ルイス様が使った数々の高度な魔術を我々に教えてもらいたいのです!!」
ああ、これはあれか。どう答えてもそんな謙遜をしないでください!と返してくるやつか。普通なら断れないだろうが、今の俺の姿ならば断われる!!
「ごめんね、僕子供だからそういうの良くわからないの。ごめんね」
秘儀 子供の振り!!
そして俺は一目散に走りだした。
「....そんな!?ま、待ってください!宮廷魔道士の地位なんて今すぐ捨てますから!!レイミア様ーーー」
高価そうなローブに身を包んだ方々は一瞬呆気にとられていたがすぐに正気を取り戻して追いかけてくる。
が、そこには俺の姿はない。身体強化をした俺は常人にはとらえられない速さで宮廷魔道士が追いかけてきた方向と正反対の路地に逃げ込んだからだ。
これで一安心と息をついた俺の耳に飛び込んできたのは、
「ぷっ。僕子供だからよくわかんないだってよ」
先ほどの会話を聞いていたヴェードのからかう言葉だった。
今思い出してもむかつく!今日は昨日の記憶がなくなるまでボコボコにしてやるからな!
そんな決意をしてヴェードの待つ闘技場に足を向けた。
アドバイス、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。