2日目の朝
ふよんふよん
ああ……父様、母様。仇を討つことが出来なくてすみません。僕はもう死んでしまいます。待っていてください今すぐにそちらに向かいますから。
たゆんたゆん
もう駄目です。僕は数分の内に死んでしまうでしょう。その証拠に体全体が気怠く吐き気までしています。足元もおぼつかないし、薄っすらと開けた目に映る光景は何重にもぼやけていて目の前の物が何なのかさえ分かりません。
もにゅもにゅ
この柔らかい物体は一体何だったのでしょうか?この正体がわからなかったのが心残りです。
先程までは微かに動いていた手が動かなくなり、薄っすらと開けられた目が閉じられた。
その時の彼の顔はとても幸せそうだった。
「ヴェード覚悟は出来てる?」
70度を超える竜殺しと呼ばれる酒をルイスに飲ませたヴェードは、ルイスを抱き締めるリシアに睨まれていた。
ヴェードはその視線に耐え切れず咄嗟にジンとアルバートに目線のみで助けを求めるが、2人はリシアに睨まれて心の中で謝りながら目をそらす。
「ほ、ほんの出来心だったんだよ」
「………」
「「………!!」」
その言葉を聞きリシアの出した答えは2人に無言で合図をする事。そして2人はその合図に逆らわずーー逆らう事が出来ずにジンはヴェードの右腕を、アルバートは身体強化をして左腕を拘束する。
「お、おい。お前ら何をしている。離せ!」
「悪いヴェード。ここで離したら俺たちが殺される」
「おとなしくやられるのじゃ」
「リシアやめ……」
言葉を最後まで発する事なくヴェードはリシアによる腹への一撃によって地面に沈むのだった。
「うっ……」
ルイスは痛い頭を抑えながら起き上がる。その視界に入ったのは見慣れない部屋だった。
「ここは?」
「おはよう。目が覚めた?」
そこにいたのは半裸と言ってもいい程薄着のリシアさんがこっちを見ていた。
…………え?
「リ、リ、リシアさん?」
「はい」
「なんでリシアさんがここに?」
「昨日ヴェードがルイス君にお酒を飲まて倒れたから私の部屋に連れて来たの」
ヴェードありがとう。俺を酔わせたのは一撃で勘弁してやる。
心の中で感謝していると、リシアさんが俺の手を取り魔法を使った。
「解毒」
その瞬間頭痛が収まり、思考がクリアになる。俺は目の前の光景を瞼に焼き付けつつリシアさんにお礼を言う。
「リシアさんありがとうございます」
「気にしなくていいわ。トーナメントで当たったら正々堂々と戦いましょう」
「わかりました」
昨日勝ち抜いき本戦へと進む32人。ルイスはその中の1人として本戦で勝ち抜く為に気合いを入れ直した。
留年回避……
滅茶苦茶危なかった。3年生ではこんなギリギリの綱渡りなどせず、受験に向けて勉強したいと思います。
春休みの宿題しなきゃな……はぁ




