武闘大会前夜
「何故こうなった……」
俺は運良く1部屋だけ空いていたガルーダの宿にある1室でそう呟いていた。
目立たない様にしようとしていたのに、初っ端から面倒な事になってしまった。
武闘大会という大衆の目の前で実力を見せなければいけない大会なんて面倒なだけで出る必要性など一欠片も感じられない。
(出るの止めるか。だけど約束してしまったし……いや、そもそもなんであの奴隷を助けようと思ったんだ?同情心か?いやいや、それはない。じゃあなんでだ)
「あーもうわかんねえ」
考える事を放棄してベッドに身を任せた。
自分が答えを導き出すことが出来なかったという事実にイライラしてふて寝するようだ。
取り敢えず明日から始まる武闘大会では目立たない様に優勝する!と無理な目標を立てて眠った。
クロノ王国にある老舗の1室。
その個室には数人の人物が出された料理に舌鼓を打ちながら話し合っていた。
そのメンバーは、今回の武闘大会のような特別な理由が無い限り集まる事が無いメンバーだった。
もしそれ以外でこのメンバーが集まるとしたら、それは遙か昔に起こったような人間と魔人の全面戦争が起こった時ぐらいだろう。
そんなメンバーの内の一人が口を開いた。
「こりゃ凄えメンツだな。俺がここに居るのが場違いの様な気がしてきたぜ」
「それは何かの嫌味?『伝説の男』って呼ばれてる貴方が場違いなら私達全員が場違いっていう事になるんだけど」
「ほっほっほっ。リシアちゃんそうカリカリしなさるな。今のはジンが場を和ませようとしただけじゃよ」
「はっ、そんな事はどうでもいい。それより今回の大会俺たちより生きのいい奴はいたか?」
「流石武闘大会と言ったところだ。ルーキーから古株まで筋のいい奴がゴロゴロいたぜ。だが、俺たちに対抗出来る奴がいるかって言われたらなあ……」
「数人もいなかったわい。ワシが見た中ではガリオスぐらいかのう」
「時の旅人のリーダーのセリネールもいたわよ」
「はぁ……折角の特別な大会だっていうのにたったそんだけかよ。人神流を極めたのと召喚魔法の使い手か。本当に俺たちとやり合えんのか?」
「ってちょっと待ってよ!もしかして貴方も出るの⁉︎冒険者の時は『武神』って呼ばれていたけど、今の貴方はこの国の王様なのよ!何かあったらどうするつもりなのよ!!」
「そん時はそん時だ。まあお前らが俺を殺そうとしない限り俺がやられるなんて事はねえよ」
「貴方ねえ……」
「まあまあ落ち着けよ。取り敢えず今日は遅いからお開きにしよう。明日に備えての準備とかも色々あるだろうしな」
「そうじゃな。ヴェード、明日の朝もまだ受付しとるんじゃろ?その時に生きの良い小童が来るかもしれんぞ」
「アルバードの爺さんの言う事は結構当たるからな。まあ期待せずに待っとくわ」
その言葉を皮切りにこの集会はお開きになった。
この時誰も口にはしなかったが、4人は心の中で同じ事を思っていた。
レイナルドとミリアナが死んでしまってもう2度と一緒に戦ったり、競い合ったりする事が出来ないと………
異世界テンプレの1つである大会がいよいよ始まります。
出来るだけ主人公やこのメンバーには自重して欲しいのですけど、無理ですかね………
新キャラがいっぱい出てきたので、簡単にまとめました。
ジン
『伝説の男』
SS級の冒険者
リシア
『戦場の女神』
女
SS級冒険者
ヴェード
『武神』
元SS級冒険者
現 クロノ王国の王様
アルバード
『爆雷の魔導師』
SS級冒険者
未だに現役
ガリオス
『暴れ龍』
人神流 滅神級
レイナルドの師匠
元S級冒険者
現 旅人
セリネール
『神獣の契約者』
時の旅人のリーダー
召喚魔法の使い手
女
S級冒険者