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騒ぎの原因

「……酷い」


「一体何があったんだ⁉︎」


余りにも酷い光景なので思わずそう呟いてしまう。民家からは火があがって必死に消化活動をしているところもあれば、怪我人を治療しているところも見受けられる。


その仮設治療院では、人手も魔力も足りておらず、沢山いる怪我人の治療が間に合っていない。治療魔法を使える冒険者や神父さん達が忙しく走り回っているのが見えた。


これは流石に助けないといけないな。


俺は水魔法を火災がおきている民家に向けて放ち消化した後、仮設治療院に向かって歩みよる。


「手伝いましょうか?」


「助かります!」


治療をしながらそう言う神父さんはかなり辛そうだ。恐らく魔力が足りなくなっているのだろう。

俺は空歩によって上空に舞い上がり、街全体を包み込むようにイメージして魔法を放つ。


『神の施し』


死者は回復させる事は出来ないが、これで殆どの人が助かるだろう。

瓦礫の下などに埋まっている人達は、瓦礫などの重圧によってまた怪我をするだろうがそこまでしている暇は無い。

そこは他の人達に頑張ってもらうとして俺は取り敢えず情報を集めなければいけない。


俺が回復魔法をかけたと気付いた人が、俺を涙を流しながら拝んだりしてくるので、少々居心地が悪くなった雰囲気の中その人達に手を振って、大量に消費した魔力の反動によって気だるくなった体でその場を後にした。


俺が向かったのは冒険者ギルドだ。取り敢えずそこに行けば情報は手に入れられるだろうと思ったのだ。

幸いギルドは無傷とは言わないが、損傷が少なく建物の崩壊なども無いようだ。

此処でもまた、先程の光景のように慌ただしい姿が見られた。


怒号などが響き渡る中、俺はカウンター近くで頭を抱えているギルド長に話しかける。


「一体これは何の騒ぎなんだ?」


「あんた一体何処に行っていたんだい? いや、今はそんな事はどうでもいい。取り敢えず奥に来な」


その真剣な表情と声色を感じ取って俺は何も言わずに部屋の奥に進んだ。


「おおっ! その者が例のルイスという者か⁉︎」


「そうじゃ」


「誰だ?このおじいさん」


「お、王に向かってなんと無礼な口をきくのだ! だから言ったのです。 野蛮な冒険者風情が集まる所に王が来る必要など無いと」


「ガイル、少し黙っておれ。 ルイス殿すまなかった。 部下の非礼を許して欲しい。 それと緊急の依頼を頼みたい」


「それはまずこの状況を説明して貰ってからだ」


「そうじゃの。 数十分ほど前、王宮に1人の侵入者が入り込んだのだ。 我らはその侵入者を捕らえようとしたが、それは叶わず皆やられてしまったのだ。 それにだ、あろうことかその侵入者は我が国の心臓とも言えるアートフェクトである『海王神の玉』を持ち去ってしまったのだ」


「その海王神の玉というのは?」


「水中でも支障が無いようにと半永久的に我が国を空気で包み続けるこの国の存続には欠かす事の出来ない物だ。 最奥で厳重に保管されていたのだが、持ち去られ、今は海王神様が何とか維持してくださっているのだが、そんなに長い時間は掛けられない」


「つまり、俺はその海王神の玉を取り返せばいいって訳だな。 それじゃあ別に俺じゃなくても良いんじゃないか?」


「いや、それを持ち去ったのは魔神なのだ。 正確には魔神が使用する人形のような物だったので直接魔神と戦う事は無いが……」


「いやいやいや、それって魔神と戦わなければいけないよな。 悪いがパスで」


「えっ⁉︎ 何故助けてくれないのですか⁉︎」


「あのなー、俺は勇者みたいな慈善事業をやっているわけじゃないんだよ。 だからそれなりの報酬が無けりゃこんな話受けるわけないだろ」


「そ、それならば貴族としての地位を与えましょう。 莫大な富の方がいいですか?」


「話にならないな」


俺が去ろうとしたのだが、王様が土下座をした事によってその歩みは止められた。


「王様⁉︎ 何故この様な者に頭など……」


「黙れ! この国を救うにはこれしか無いのだ」


みんながその光景、その言葉を聞いてジッと俺を見てくる。


………はぁ、面倒くさい事になってきたな


「顔を上げてくれ。 しょうがないから依頼を受けてやる。 ただし、報酬はしっかり貰うからな」


「その報酬は……」


「まあ、難易度次第だ。 割に合わない仕事はするつもりはないから、その仕事に見合うだけの報酬を用意して貰う」


「では!」


「引き受けてやる。 ただし明日にしてくれ。治癒魔法を街全体に使ったせいで怠いんだ」


「さ、先程の治癒魔法はルイス殿がやったのですか?」


「そうだ。 話が終わったのならもう帰っていいか? 早く宿屋で休みたいんだが…」


「わかりました。 本当に依頼を受けて下さってありがとうございます」


再び頭を下げる王様、国を守る為に王様が城下町まで自ら足を運び、信用出来るかどうかもわからない冒険者に頭を下げるなんて滅多と出来ることじゃないな。


俺は王様の行動に感心しながらその場を後にした。


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