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修行終了

「では、最後の仕上げに入る」


「おう」


俺が作ったコップに天ちゃんの血が注がれる。天ちゃんの目の前には俺が買ってきた最高級品のワインが置かれていた。


「厳しい修行を耐え抜き、開始当初とは比べ物にならないほどの力をつけたルイスを祝って……乾杯」


「ありがとう」


2年間にも及ぶ厳しい修行……その仕上げとなるのは、天ちゃんの血を飲む事だった。


忘れてはいけないが、天ちゃんは伝説の龍であり、その血や肉は普通の魔物のそれとは違って、まだ解明されていない不思議な細胞が活動している。

もしそれを口にすると、その細胞によって身体中の細胞が破壊されてしまい確実に死に至るらしい。

だが、その細胞に打ち勝つ事が出来ればその龍の恩恵を与えられるという。


生or死の博打だった。だが、俺は死など恐れていない。死なんかよりも仲間を、大切な人を失う方が怖かった。

だから俺は更なる力を得る為に血を飲む事にした。それに俺は天ちゃんに今のお前の肉体なら大丈夫だろうとまで言われている。

万が一の事がない限り大丈夫だろう。

飲んで数日間は想像を絶する痛みを感じるらしいが、俺はそんな事を気にせずに一気に飲み干した。


「あああっ。あがああああああぁあぁあっ」


身体をバラバラにされている様な痛みが、頭の中を直接鈍器で殴られるかの様な痛みが、濃硫酸を体内に流し込まれたかの様に身体中が熱くなり、喉が焼ける様な痛みが……

形容しがたい様々な痛みが俺の身体を襲い、その度に俺は悲鳴をあげる。

いや、悲鳴と言うよりは断末魔といった方が正しいのかもしれない。



「も、もういっそ……」


…っ何を言おうとしてんだ俺は。そんな事許されるわけがないだろ。


先程の言葉が聞こえていたのか、天ちゃんは俺の側にやって来て続きを囁いた。


「殺してやろうか?」


「……っ」


その囁きに思わず返事をしそうになる。それ程までにこの痛みは強かった。

だけどな……


「こんな所で死ぬわけにはいかねぇんだよ」


「……ふっ、よく言った。だが、手はかさん。耐えろ」


「うっせー わかってるっ」


痛みを必死に堪えながら天ちゃんに軽口を叩く。何もせずに痛みを耐えるより、天ちゃんと話をして気を紛らわしておいた方がいい。

そう思いながら俺は痛みに耐えるのだった。



「うがぁぁぁ あああっ」


俺は痛みにより眠ることすら許されずにひたすら痛みが引くのを耐えていた。

治癒魔法を使ってみたが、全く効果が無い。

というよりもまず、魔力を上手く練る事が出来ないのだ。

だが、何かをして気を紛らわせなければ気が狂ってしまいそうになる。

俺はどうにかして魔力を練り、治癒魔法を使えるように訓練をした。


まだ上手く魔力を練る事が出来ない。

一体いつまでこの地獄は続くのだろうか。早く解放して欲しい。


もう嫌だ。呼吸をする度に痛みが襲ってくる。身体を1ミリでも動かすと気絶しそうなくらいの激しい痛みが俺を襲う。


もういっそ殺してくれ。


ようやく魔力をコントロール出来るようになってきた。治癒魔法を使うと少し痛みがマシになった。と言っても大して変わっていないのだが………

まあ無いよりはマシだろう。


はじめに血を飲んだ日から一体どれだけの時が流れたのだろうか。

段々と痛みが和らいでいる。


いよいよ死ぬのか?それとも治る前兆なのか?

どちらかわからないが治ると信じる事にしよう。


「……治ったのか?」


天ちゃんに聞くと、1カ月以上も苦しんでいたようだ。正直無理だと思ったらしい。

まあ俺も死を覚悟したからな………

とりあえず今は生きている事を喜ぶ事にしよう。



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