決死の決断
圧倒的な存在感、目の前に立っているだけでも震えが止まらない。
一瞬でさえ気が抜けない、気を抜けばしんでしまう。
そんな死の恐怖が俺達を襲う。
今すぐ逃げ出したいと思う気持ちを抑える。
突如 天龍を中心に吹く嵐に吹き飛ばされないように踏ん張りながら、俺達は天龍の背後に咲く青色の花を見た。
「青空の花……」
あった、本当にあった。だが、それは天龍の背後に咲いている。
幸いなことにまだ天龍には気づかれていない。
気づかれる前にこっそりと行けば気づかれずに取れるかもしれない。
だが、それは危険すぎる。
万が一気づかれれば待っているのは死だ。
どうする、どうする……
「ラミア⁉︎」
俺が迷っていると俺の横をラミアが駆け抜けていった。天龍の尾を飛び越え、青空の花の元へと気づかれることなく無事に辿り着いた。
「……………」
俺とレイラは呆気にとられて声も発することが出来ない。
ラミアはその間に青空の花を摘み、先程と同じように天龍の尾を飛び越えようとした、その時天龍が尾を動かした。
天龍は気づいてはいなかった。
ただの偶然だ。だが、それは最悪のタイミングで起き、ラミアは天龍の尾に引っかかって転けてしまった。
ラミアが尾に触れたことで天龍が俺達の存在に気づき、殺気を撒き散らす。
「ラミア逃げろ」
ラミアは恐怖で固まってしまっており、動かなかった。
頭の中にキィィィンという謎の音が響いたその瞬間、天龍がラミアに向けて尾を振り下ろした。
「……っ 間に合え」
俺は天龍の尾からラミアを守るため「岩壁」を尾とラミアの間に発動し、尾をラミアの進路上から外す為に横から「炎岩弾」、わぶつけようとするが、当たる瞬間に天龍から発せられる風で火が消え、威力が弱まり尾に当たった瞬間呆気なく砕け散った。
「くっそぉぉぉぉ」
俺が放った炎岩弾が無力化された。
いくら無詠唱といえども間に合うタイミングではない。
あとは天龍の尾が岩壁に叩きつけられるだけだった。だが、それは起きなかった。
レイラが間に入り、剣で尾を逸らしたのだ。
ラミアの真横に振り下ろされた尾は地面を砕いた。もしレイラが間に合っていなかったらラミアは岩壁とともに潰されていただろう。
「レイラ、ラミアを頼む」
「わかってる」
レイラはラミアを抱き抱えて俺の元へともどってくる。ラミアの手にはしっかりと青空の花が握られていた。
「レイラ、いや、レイラさん一つお願いをしてもいいですか?」
「なんだ」
「このままでは全滅して青空の花を届けることができなくなります。それだけは避けなければいけません。お願いです。ラミアを連れて王宮に戻ってください」
レイラさんは一瞬迷うようなそぶりを見せたがすぐに決断した。
「ちょっと待ってよ。お兄ちゃんはどうするの?」
「嫌だ、お兄ちゃんも…」
「ラミア、俺を信じろ。レイラさんお願いします」
「……すぐに戻ってくる。絶対生きて帰るぞ」
「ええ、帰ったら美味しい料理を作ってあげますよ」
泣き叫ぶラミアを担ぎ上げ、レイラさんは俺に背を向けた。
「あの時と状況が似てるな。……イッッ」
再びキィィィンという音と頭痛が俺を襲う。
「クソ、一体なんなんだよ」
その音に促されるように天龍の方を見た。
「なっ………」
天龍は構えていた。
突進ではない、口を開けている。
ブレスだ。
その軌道上にいるのはレイラさんとラミアだった。
再びズキッと頭痛がする。だが、頭に響いたのはキィィィンという音ではなかった。
「さあ、どうした。お前の答えを見せてみろ」
脳内に直接声が響く。気がつけば俺は声に促されるように動いていた。
追記、ツイッターはじめました。
@guntegaotiteru




