堕落の洞窟突入⁈
「…と言う訳で、明日レイランさんと青空の花を取りに堕落の洞窟に潜ることになった。堕落の洞窟はとても危険だ。ついて来るかどうかは、ラミア お前自身で決めろ」
俺は全てを話した上でラミアに選択を委ねる。本当は連れて行きたいが、無理矢理連れて行っても無駄だしな。
出来れば自らの意思で行きたいと言って欲しい。
「行きたい…けど、足手まといになるよ?」
「大丈夫。俺が必ず守るから」
僅か二歳だというのに、自分の欲求を抑えて気配り出来るのは凄いことだと思う。
けど、はたから見れば俺の方が凄いんだろうな。五歳でこれだけの剣術と魔術を扱えたら、神童と呼ばれてもおかしくないだろう。
本当のことを言ったらみんな信じてくれるかな?
……いや、やめておこう。気持ち悪がられたら絶対に心が折れる。
とりあえずラミアの意思は確認出来たんだ。明日に向けて早く寝ることにしよう。
そう思いら俺は荷物をまとめて用意されていた凄いゴージャスな客間のベットで寝た。
……これ、後でお金とか請求されないよね。
朝四時、俺達は城の前に集まっていた。
「……眠い」
「スースー」
「お前達情けないぞ。早く目を覚ませ」
だってまだ朝の四時だよ?俺達引きこもりと二歳の子供だよ?そんなの起きれただけでも奇跡なんだよ‼︎
……ラミアは寝てるけど
「ほら、これを飲め」
俺とラミアはレイランさんが差し出した不思議な色をした液体を寝ぼけながら受け取り、言われた通りに飲んだ。
うーーん。舌に絡みつくようなドロドロとした液体に微かな甘みと酸味、その後に押し寄せてくる苦味と生ゴミのような臭いがマッチングして……
俺達はカッと目を見開き、液体を吐き出していた。
「どうだ?美味しいだろ。レイランスペシャルだ」
「こんな不味いものを飲ませて殺す気ですか⁉︎不味すぎて死にかけましたよ」
「お兄ちゃん、口の中ぎ気持ち悪いよ」
「レイランスペシャルが不味い…だと……」
ショックを受け、驚愕の目で俺達を見てくる。
しかしこんなものを美味しいと思えるのか?これが美味しいなんて味覚音痴か?味覚音痴なのか?
「…まあいい。目が覚めただろ?いくぞ」
少しふてくされている。嘘でも美味しいと言っておいた方が良かっただろうか。
いや、美味しいと言ってこれ以上飲まさせたら、本当に死にかねない。
俺は先程の味を思い出し、吐き気をおぼえながらも、俺は気づいた疑問点を聞くことにした。
「レイランさん」
「レイラでいい」
「レイラ、どうやって移動するんですか?馬はいませんし……」
「飛んでいくに決まってるだろ」
「そっかー飛んでいくのかー……って俺達飛べませんよ‼︎」
「わかっている。だからお前達ら私に掴まれ」
も…もしかしてそれは、お触りオッケーっていうことですか⁉︎
手が滑ってその柔らかそうなプリンを触っても怒られないってことですよね‼︎
そんな事を考えてるとラミアがつねってきた。
痛い痛い、わかった わかったから。そんな事をしないからむくれた顔でつねらないで。
ラミアの可愛い顔が台無しだよ。
まあ、むくれてても可愛いんだけどね。
「おい、お前達早くしろ」
俺達はじゃれ合うのをやめ、素直にその言葉に従ってレイラの背中に飛び乗った。
洞窟までの飛行時間は数秒間しかなかった。
王宮から洞窟までの距離が短いのではない。レイラが速すぎるのだ。
体感速度的に言うと、新幹線の五倍くらいの速さだった。土魔法の岩壁で固定していたので振り落とされはしなかったが、生身で超高速移動をした人間の末路がこれだ。
「……ウプッ」
「……………………」
「……すまない」
すまないじゃねーよ。俺が数秒間の間、滅神級の治癒魔法をかけ続けなければ、俺達は今頃速度に耐え切れなくて死んでいたぞ。
人間脆いんだよ。
ラミアを見ろ。治癒魔法アリでもグロッキー状態だぞ。
そう文句も言いたかったが、気持ち悪過ぎてそんな元気もなかった。
結局、この日は堕落の洞窟には潜らず、入り口で野宿をした。




