いよいよ旅立ち
部屋から出ると、そこには部屋の隅で毛布に包まりながら泣いているラミアと慌てて服を着たフランクの姿が………
なんてことはなく、二人が楽しく話している姿が見受けられた。
「あ、ルイスさんどうでしたか?」
「無事許可証を貰いました。それに聞きたいことも聞けました」
「それはよかった」
「ついでに天空神宛の手紙も貰いましたよ」
「えっ?ほ、本当ですか?」
「ええ、そのせいで次の目的地は自動的に天界に決まってしまいました」
「よっぽど気に入られているのですね」
……俺の時はどんなに頼んでも何もしてくれないくせに と、泣きそうな顔でブツブツ言っている。
なんだかすごく可哀想だ……
「お兄ちゃん、あのね あのね フーさんとっても物知りなんだよ。フーさんがね教えてくれた通りにしたら魔法使えるようになったの」
妹がとても嬉しそうな顔で報告するが、俺はとても悲しい気持ちになった。
フーさん?誰だよそいつ。もしかしてフランクのことか?いつからそんなに仲良くなったんだよ。俺でもまだ妹のこんな顔見たこと無いのに。
………っていうか、えっ?魔法覚えたの?
俺は慌ててフランクの顔を見る。
フランクはさっきとは打って変わってとても満足げな顔をして言った。
「ラミアちゃんは天才ですね。相手のスピードやパワーを下げることは出来ませんでしたが、味方の身体能力を上げることは出来るようになったので、補助魔法 上級をマスターしたことになります」
「ほ、補助魔法 上級?」
「うん、少しでもお兄ちゃんの力になりたいと思ったから………ダメ?」
「いや、嬉しいよ」
俺が使えない魔法を妹が使えるというのは少し悔しいが、妹が俺の為に頑張ってくれたんだ、ダメなはずがない。
俺が嬉しそうにしているとフランクがこちらを見てニヤニヤと笑っていた。
「……なんだよ」
「いえ、あなたにも年相応な部分があるのだと安心しまして」
「うるさい」
精神年齢四十過ぎたおっさんが五歳児に見えるとか悲しすぎるぞ。
俺の心は百のダメージを受けた。
「ルイスさん、ラミアちゃん」
「ああ?」
フランクの顔を見ると真面目な顔をしていた。
「二人とも絶対に死なないで帰ってきてください」
「フーさん 大丈夫だよ。だってお兄ちゃんは最強だもん」
俺は妹の頭を撫でてフランクに目を向ける
「俺はもう二度と大切な人を殺させはしない。強くなり、みんなを守る為に死ぬわけにもいかない。そんな心配するな、必ず生きて帰ってくるさ」
「帰ってきたら一緒にご飯でも食べようか」
「その時は奢ってください」
「わかったよ」
そんな他愛もない話をして俺たちは別れた。
フランクと別れた後、俺たちは王宮を出て旅の扉の前に来た。
「ルイスさん、ラミアさんですね。フランク様から話は伺っています。念のため許可証を見せてもらってもよろしいでしょうか」
「はい」
俺は許可証を懐から取り出して兵士に渡した。
「確かに確認しました。ではどうぞ」
旅の扉がゆっくりと開かれてゆく。いよいよ旅に出るのだ。
本当に大丈夫か?生きて帰れるか?
そんな不安が募る。
その時、妹が不安そうな顔で手を握り、俺の顔を覗き込んできた。
「……お兄ちゃん、私達どの世界に行くの?」
「まずは天界だ」
「みんな飛んでいるのかな?ワクワクしてきた」
「そうだな」
……そうだ 何も不安がることはない。
俺は一人じゃ無いんだ。妹が…ラミアがいる。
冒険を楽しもう。そして目的を果たそう。
そう思い、俺たちは旅の扉へと足を踏み出した。