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試練

「う……ん」

歩き始めて五分ほど経つと妹が目を覚ました。


「おはよう」

「………ふぁ おはようお兄ちゃん」

妹は再び閉じそうになる目を擦り、なんとか目を開ける。俺は妹を背中から降ろした。


「昨日のことは覚えているか?」

「……うん」

「俺達は昨日の男を探し出して父様と母様の敵を討つ。そのために旅をすることにした。」


旅という言葉に反応し、辺りを見渡して自分が見知らぬ地にいることを理解する。

妹の目には涙が浮かび始めた。


「ラミア、俺が絶対に守るから一緒に来てくれるか?」

「……ぐすっ 」

少し泣きながらも、自分が今何をすべきかを理解して頷いてくれる。

この歳で状況を正確に理解し、判断が出来るとは、どうやら妹は天才のようだ。

流石父様と母様の子供と言うべきかな……


「よしっ それじゃあ今から人神に会いに行くぞ」

「うん」

俺は、妹に反対されて進むことが出来なくなるという最大の懸念を乗り越え王宮へ向かった。


「うわっ でっけえ」

「すごい」

王宮はすごく大きかった。かつての俺達の家の十倍くらいだろうか、そんなことを考えながら中に入ろうとすると、二人の兵士に止められる。


「ここからは立ち入り禁止だ」

「フランクさんに会いたいんです」

「フランク様に会う?無理だな。俺らがお前らみたいな子供を通すわけないだろ。早く家に帰って母ちゃんの乳でも吸ってな」

ぎゃははははと二人の下品な笑い声が俺をブチ切れさせた。


「父様と母様はある男に殺されてもうこの世にはいない。俺はフランクさんに会って神様に会わせてもらう。旅の扉の許可証を貰い、世界中を旅していつか男を見つけ出し、敵討ちをする。ただの王宮の門番程度で俺達の目的の邪魔をするな。俺達がフランクさんに会いたい理由を知った上でさっきの言葉をもう一度言ってみろよクソ野郎ども」

「……………」

二人は黙った。だが、意地でも門は通させないようだ。


「どかないなら力ずくで通る」

水弾ウォーターバレットで二人を気絶させ通ろうとした時、中から扉が開いて一人の男が出てきた。


「はいはい そこまで」


その男の声を聞き、姿を見た瞬間、兵士二人が姿勢を正し敬礼する。


「お疲れ様ですフランク様」

「そんなに固くならなくていいよ。で、君たちは?」

「ルイス=グラジオス」

「ラミア=グラジオスです」

「ルイス君、ラミアちゃん、二人の兵士の非礼すまなかった」

「フランク様、何故このような子供に頭を…」

「黙れ」

一言で兵士を黙らせると言葉を続ける。


「すまないな。お詫びに君たちを盛大にもてなすことにしよう」

「いや、いいです。その代わりに人神に会わせてください」

「それは無理だ。神に会うのは王族でも神官でも難しい。まずはそれなりの資格がいる」

「剣神と賢帝の子供では不十分ですか?」

「お前、自分がそうだと?」

「はい」

「ははははは それは面白い。それならば証明して見せろ。証明出来たのならば会ってもらえるように頼んでやる」

「その方法は?」

「我が国の将軍を倒してみろ」

そう言ってフランクさんは兵士の訓練場らしきところへと歩いていく。

「お兄ちゃん大丈夫なの?」

「心配するな。俺は負けないよ」

妹の頭をクシャっと撫でて俺もフランクさんの後に続いて歩き始めた。


訓練場に着くと、いかにも将軍ですよという風貌の男が立っていた。

「こいつが俺と戦うのですか?」

「そうだ。剣神と賢帝の子供らしい」

「へー 面白い。その実力をたっぷりと味わおうじゃねぇか」

「死亡フラグ立て過ぎだろ……」

「あ?なんだよその…なんとかフラグって」


いちいち面倒くさいなこいつ


「そんなことどうでもいいから早く始めましょう」

そう言って俺は将軍と距離をとる。

「おいおい、お前魔導師なのか。なんで腰に剣をぶら下げてんだよ」

「そんなことをこれから負ける奴に教えてもしょうがないだろ」

そう言って俺はフランクさんを見た。

フランクさんが頷いて合図をする。


「始め‼︎」

「なんだ⁈」

俺が無詠唱で発動させた数十発の水弾ウォーターバレットを剣ではじく。

流水りゅうすいか」

「はっ 流石剣神の子供だ。これぐらいは知っているようだな」

一瞬の油断が生じる。俺はその瞬間を逃さなかった。

岩壁ロックウォール

男の四方を囲む……天井だけ開けて。

炎帝えんてい

「上がガラ空きだ」

そう言って飛び出して来たところへと叩き込んだ。


「くそが、やりやがったな」

あちこちを火傷している。無傷ではなかったようだ。

「父様なら、アランさんなら、破壊神なら無傷だったぞ」

「黙れぇぇぇぇ」

掛かった。俺は素早く杖を背中に背負い直し、飛び出して来たところを狙い撃ちした。

「天神流 疾風の太刀」

鋼鉄アイアンアーマー

「なっ⁈」

俺の太刀は相手を確実に捉えた。だが、当たる直前いきなり相手の皮膚が硬化した。

俺はフランクさんを睨む。


「いやー邪魔をしてすみません。けど、今私が魔法を発動させなかったら将軍さん死んでましたよ」

「………」

将軍が青ざめた顔をしている。その胸には大きな刀傷がはっきりと残っていた。


「それはすみませんでした。で、どうですか?信じてもらえました?」

「信じるもなにも初めからわかっていましたよ。神殺しと創造神の涙を持っている時点で間違いないじゃないですか」

「それじゃあさっきの勝負は」

「はい。あなたが旅をして死なないかどうかの確認と……」

「将軍の鼻っ柱を折る為だよな」

「……へぇ」

「相手が子供だということで明らかに油断していたし、己の力に慢心もあった。それを俺との勝負で考えさせる為だろ?」

「その通りなんですけど、出来ればそれは将軍に直接考えて欲しかったんですけどね」

俺は将軍を見るが、将軍は俺達の話など聞いておらず上の空だった。


「大丈夫みたいぜ」

「そ、そのようですね」


「……ゴホン。では、約束通りに神様に話を伝えますから、応接間で待っていてください」

「わかった。いくぞラミア」

「うん」

そうして俺達は応接間に向かった。


「大丈夫だっただろ?」

「うん。お兄ちゃん最強」

嬉しそうに妹が抱きついてくる。好感度がアップしたみたいだ。


「何があってもラミアだけは守るから……」

「ん?お兄ちゃん何か言った?」

「いや、ラミアは可愛いな」

「えへへ〜〜」

嬉しそうに笑う妹を見ながら、改めてそう決意した。

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