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ニートの過去《修正版》

俺は何故こんなことになっているのか……

公園のベンチで横になりながら俺は考えていた。夏なのでさほど寒くなかったが、ジメジメとした空気がうっとうしい。


だが、自分の思った以上に疲労は溜まっていたようだ。昔に比べて星が見えにくくなった空を見ながら俺はいつの間にか眠りについていた。


「おい、起きないか!」


中年男性の声によって俺は起こされる。

目を開けるとそこは懐かしい教室だった。


「流石10歳でアメリカに留学した天才様だな。俺の授業は聞かなくても大丈夫だってか? おい、○○この問題を解いてみろ」


そう教師が言う。


黒板を見れば俺にとっては初歩的な問題が羅列してあった。考えるまでも無いその問題をスラスラと解き、チョークを置く。


「ぐっ正解だ……おい、○○どこにいく」


「頭が痛いので保健室で仮眠して来ます」


そう言って俺は教室を後にした。


当然俺は保健室に向かうわけ無く屋上に向かう。そして屋上で寝転びながら俺は考えた。


何が起こっている?と……


親の仕事についていく為アメリカに10歳で飛び級。日本に戻って来た俺には友達はいなかった。いや、出来なかったのだ。天才と凡人は感覚が違い合わなかった。たったそれだけのことだ。俺は皆から避けられ始めた。初めは舌打ち 悪口程度だったが、日に日にエスカレートし、最終的には集団リンチや暴力は当たり前になっていた。


そこまではなんとか耐えられたのだ。


だが、ある日事件が起こった。


たまたまいつもより少し早めの時間に来て勉強をしていると、いつも俺をイジメている不良グループが教室に入ってきて、いきなり俺に殴りかかってきたのだ。


また何か気に食わないことでもあったのだろうか?

微かに痛む頬を摩りながら顔をあげると、これ見よがしにグループの一人がナイフを取り出した。…結果から言えばそれは刃を潰したナイフだったのだが、当時の俺は刃物を出された事で反射的に動いてしまい、不良グループをのしてしまったのだ。


その姿を続々とやってきたクラスメイトに見られ、周囲が不良達を庇ったせいで俺は停学となってしまった。


その後の事もしっかりと覚えている。停学に集団リンチを受けた事や、その時にあるものがトラウマになったことなど。


過去を思い出してみたが、それは実際にあった事実であり、とても俺の妄想とは思えなかった。なぜなら今でも鮮明にその場面が思い出せるからだ。


「これは夢か……」


そう結論を出し、俺は教室へ戻った。


その日の学校が終わり、家に帰る途中見知らぬ不良絡まれる。その中にはあの不良グループもいた。


「あいつです。お願いします。やっちゃってください」


「おう。やったらちゃんと払えよ」


「ちゃんとあいつを不登校に追い込んでくれたら払いますって」


そう言って笑う不良グループの内の一人を見て俺は顔を引きつらせる。

俺一人に対して相手は十人はいる。

俺はこれに立ち向かうのは無謀だと判断し、逃げようとしたが、一人の人物が合図すると何処に隠れていたのか、周りから釘バットや木刀を持った仲間と思われる連中が続々と現れ、俺を取り囲んだ。


「……っ!」


比較的人数の少ないところから抜け出そうとするが、それは叶わず輪の中に再び押し返される。


「おいおい 逃げんじゃねーぞ」


「楽しいパーティーはこれからなんだからよ」


下品な笑い声が辺りに響くが、誰も俺と目を合わせようとはしない。それどころか見て見ぬ振りをして立ち去ってしまう。


「よそ見してんじゃねーよ!」


「うぐっ」


背後から金属バットで頭を殴られ俺は立っていられなくなる。だか、不良達はそんな事お構いなしに追撃し、俺は立つ余力すら無くなった。


「おい」


男が合図をすると仲間の二人が俺を拘束して立ち上がらせる。


男は下っ端らしき人物から何かを受け取り、こちらに歩み寄ってきた。


近づくにつれ、男の持つ物の中身が明確になり、それを見て俺はこれから何をされるのか察する。


俺の顔が青ざめていき、必死に抵抗するが拘束を解くことは出来なかった。


男は多種多様な虫が入った虫かごを俺の服の中で開ける。何かが這い上ってくる気持ち悪さ、動くたびに潰れる感覚、容赦無く皮膚を抉る攻撃に気がおかしくなりそうになる。


そんな俺の口にもう一つの虫かご当てられる。そこからカサカサという気味の悪い音を立てながら口内へと着々と歩を進める虫。

僅かだが既に侵入している為口を閉じる事も出来ない。


虫が口内に入ったその瞬間、俺は意識を手放した。


勢い良く起き上がる。周りを見渡せばまだ日が昇っていない空が広がっているだけだった。


「やっぱり夢だったか」


夢と分かっていたが耐えられなかった。今思い出すだけでも吐き気がする。行われた場所は違ったが、あれは俺のトラウマそのものだ。



冷や汗を滝のように流すそ俺をあざ笑うかのように、朝日が辺りを照らし、セミが鳴き始めた。



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