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手紙

チュンチュン チュンチュン

小鳥の囀る声が、窓から入ってくる日の出を告げる温かい日の光が、私を目覚めさせる。

だが、そこにいるはずのルイがいなかった。


「あれ?ルイ?」

意識が完全に覚醒する。部屋を見渡すがルイはどこにもいない。


「あっ、先に起きてリビングでお父さんと喋ってるのかも」


ルイが私を置いていなくなってしまった。

そんな嫌な想像を頭から追い出しリビングへ向かった。


「おはようお父さん」

「あ、ああ おはよう」


いつも通りに声をかけただけなのにお父さんはビクッとし、顔に浮かべた笑顔は引きつっている。

リビングを見渡すが、ルイが、ラミアちゃんがいない。嫌な予感がする。


頭の中では確かめるしかない。早く聞けと騒いでいる。しかし、喉はカラカラに枯れ、言葉を発することが出来なかった。


「ルーシェ よく聞いてくれ」

「…………」

お父さんの態度を見て予感が確信に変わる。

やっぱり聞きたくない。そう思うが、体が固まってしまったかのように動くことが出来なかった。


「ルイスはこの家を出ていった。世界中を旅して両親の敵を打つと言っていた」


私は涙を流していた。昨日流しすぎてもう絶対に出ないと思っていたのに、涙はどんどん目から溢れ出てくる。


「……ルイスから手紙を預かっている」

お父さんは一通の手紙を差し出した。

私はその手紙を見て固まっていた。手を伸ばすことも出来ない。ただずっと見つめていた。

「ちょっと素振りをしてくる」

気を利かせかのか、そう言ってお父さんは家を出ていった。


おそるおそる手紙に手を伸ばす。

手紙に指が触れる。読みたくない。そう思うが、自分の体は手紙を持っていた。

そして手紙を持ち、部屋に戻って読むことにした。


封を開ける。

中から手紙を取り出し私は読み始めた。



ルーシェへ


ルーシェがこの手紙を読んでいる時には俺はこの家を出ていっているだろう。

俺がルーシェに言わずに出ていったことを恨むだろう。だけど俺が旅に出た理由は知っておいて欲しい。


俺は父様と母様を殺したあの男……破壊神を殺すために旅に出た。


俺はルーシェを旅に連れて行くことも考えた。しかし、俺では二人を守れない。

だから連れて行くことができなかった。

アランさんの元で安全な生活をして欲しかったから……

俺は旅に出て強くなる。もう二度と大切な人を殺させないために。


これが俺が旅に行った理由だ。

ここからは俺の気持ちを書きたい。


俺達は会ってたった二日の仲だけれど、俺は心からルーシェのことを愛している。

将来はルーシェと結婚したいと思っている。


それはアランさん……いや、お父さんにも伝えておいた。


けれど、ルーシェは俺が旅に行っている数年に新たに好きな人ができるかもしれない。

俺のことを嫌いになるかもしれない。

まあそれは何年も離れていたら当たり前のことかもしれないがな……


まあその時は何とかして諦める。


けど、俺のことをずっと待っていてくれるのなら、俺は戻って来た時君にプロポーズをしよう。


そしてその時は俺と結婚して欲しい。


愛しているルーシェ



手紙を読み終わると、いつの間にか私の涙は止まっていた。


ルイは戻ると言ってくれた。結婚しようと言ってくれた。ルイは強くなるために頑張っている。


なら、私は?


ルイが戻るのをただ泣いて待っているだけ?


違う。私も強くなる。足手まといにならないように出来るだけのことをしよう。

そう思い、私は家を飛び出した。


「お父さん」

外で座っている父に声をかける。

「どうした?ルーシェ」

「私に龍神流を教えてください」

父は私の真剣な顔を見て驚いている。

「本気か?」

「はい。思い返せば、私は今まで何かを真剣に取り組んだことがなかった。何かを欲しがったこともなかった。だからまず一歩踏み出したいの。ルイが戻って来た時に足手まといなんかにならないようにしたいの」

「……わかった。修行は明日から。修行の間は娘では無く、一人の剣士として厳しくする。それでもいいか?」

「はい」

「よし、それだけの覚悟があるなら大丈夫だ。途中でやめることは許さないからな」

「わかっています」

「それじゃあ明日に備えて準備でもしてこい」

「はいっ‼︎」


私は元気良く返事をして家の中に入った。


ルイ……待ってる。ずっとずっと待ってるから絶対に生きて帰ってきて……


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