疾風の太刀習得
妹の名前はラミア=グラジオスと名付けられた。ラミアが産まれて一年が過ぎたが、元気良く泣き、よく食べ、良く動く。
何事も無くすくすくと育っている。
まあ、父様と母様が少しノイローゼ気味なのを除けばだが……
そして俺は遂に実践的な修行をさせてもらえるようになった。まだ技は教えてもらえないが、今は基礎トレーニングをしてから型の練習、打ち込みの順番でトレーニングをしている。そんなある日のこと……
「ルイ、今日はお前をテストしようと思う」
「テスト…ですか?」
「そうだ。このテストにクリアすれば技を教えてやる」
「本当ですか‼︎」
「ああ…本当だ」
俺はその言葉についガッツポーズをする……が、そのあとにレイの発した言葉により俺の笑顔は固まった。
「テストの内容は、俺から一本取ることだ」
「剣神」という称号を与えられた人物から一本を取る。そんなことが出来たら、俺は一人前と名乗ってもいいだろう。
いや、一人前どころか達人と名乗っても文句を言うものは絶対にいない。
それほどまでに一本という壁は大きく厚いのだ……
俺がテストの内容を聞いていじけていると、父様が笑って言う。
「勿論ハンデはつける」
「ハンデってなんですか?」
父様は地面に半径一メートルの円をかいた。
「俺はこの円から出ないし、出たら一本とする。ただ、魔術は無しだ」
父様が言った条件でも、確かに一本を取れる確率はほぼ無いに等しい。
だが、やらないよりマシだ。
「わかりました。いきます」
俺は剣を構える。父様も剣を構える。
父様に隙は無い……が、父様はコレをテストと言った。ならば今までの修行の中にヒントがあるはず……
俺はそう考えて型の体制に入る。ここからの打ち込みは何百、何千とやって来た。
それを信じるだけだ!
そう思い、俺は打ち込んだ。
(……へぇ、気付いたのか)
俺は関心していた。
いくら練習を積み重ねていても適当にやっていたらここまで綺麗な体制は出来ない。
(だが、それだけじゃ俺から一本は取れないな)
俺は練習中に一の型"疾風の太刀"の要訣を教えてきた。そのことに気づき、使うことが出来たのなら合格なのだが……
ルイは打ち込んでこない。それどころか動こうともしない。
どうしたんだ?
そう疑問に思い、一瞬気を緩めた瞬間ルイが突っ込んできた。
……よく思い出せ。あの森で父様が使った技はこの型からだったような気がする。
なら、父様は既に俺に練習を通して技を教えていたのだ。
それを使えば一本取れる。
そう思い、俺は隙を伺った。
父様に隙は無い。しかし、息子である俺が急に動かなくなれば一瞬隙が出来るはず……
そう考えて機会を伺う。勝負は一瞬で決まる
ーー次の瞬間、父様に隙がうまれた。
今だ‼︎そう思い俺は父様に打ち込んだ。
結果として、一本はとれなかったが円の外に出すことは出来た。
テストに合格したことは嬉しい、が完璧に隙を突くことが出来たのに一本をとれなかったのは悔しかった。
「ルイ、合格だ。お前はもうすでに天神流 一の型を使えるようになっている。これでルイは天神流にて中級を名乗ることが出来る」
「……はい、ありがとうございます」
「良かったぞ たまたま間に合っただけで完璧に隙を突かれた。ルイには才能がある」
「でも、悔しいです」
「その悔しさを忘れるな。とりあえず次は人神流の修行をする。また半年ほど基礎トレーニングだが、ついてこい」
「はいっ」
俺は次こそは、と決意を胸に天神流の修行を終えるのだった。