大事件発生‼︎
一ヶ月が過ぎた。今日はルイに修行が今日からであると伝えるのだ。
もちろんルイにはまだ伝えていない。サプライズ形式で言った方がルイも喜ぶだろうと思ったからだ。
俺とミリアは一緒にルイの部屋へむかったーーーが、ルイはベットにはいなかった。
まだ早朝の六時だというのにだ……
俺とミリアはルイがどこに行ったのか屋敷内を探すのだった。
ー五分後ー
ルイは簡単に見つけることが出来た。
庭で魔術の練習をしていたのだ。
「ルーー…」
俺は声をかけようと思ったが、ルイの表情を見てやめた。
真剣な表情で集中していたからだ。
ミリアも同様に声をかけるようなことはせず、じっと見守っている。
ルイが深呼吸をし、空に向かって手を伸ばした。魔力が展開される。
魔力が展開された瞬間、鳥肌が立った。全身から嫌な汗が噴き出してくる。
本能が危険を察知しているのだ……
俺達は急いでルイの元へと向かった。
風魔法の特訓は、三週間ほどでほぼマスターすることが出来た。なので余った時間は土魔法や火魔法の訓練に費やした。
また、風魔法を発動した時に気付いたことをヒントにある魔術を練習した。
混合魔法だ。
性質の違う他の魔術を合わせる混合魔法は、案外難しく、何度も失敗したが、一つだけ魔法を発動させることが出来るようになった。
「氷炎」だ。
この魔法にはちょっとした工夫を使用した。
炎と氷を直接合わせるのではなく、少しだけ間隔をあける。そこに酸素を入れ、炎が消えないように維持するのだ。
この魔法は、相手に当たれば氷と炎が相手を襲い、氷が砕かれれば炎だけが相手に纏わりつく。
迂闊には防ぐことが出来ない魔法の筈だ。
そしてもう一つ、思いついたことを実践することにした。
俺は深呼吸をする。そして空に向けて手を伸ばす。
イメージするのは空よりもっと上、宇宙だ。
俺はイメージの中で宇宙に鉄の塊を出現させる。圧縮させた高密度の鉄だ。
その周りに Ca Al Si C Ti……etc.
これら物質を周りに結合させ、再び圧縮する。魔力は消費したがこれで完成した筈だ。
そして、作り出された物質はこの星の引力に引かれ、隕石として落ちてくる。
裏技をイメージの中で使用したので成功するかわからないが、俺の考えが正しければこれで成功する筈だ……
数十秒待つ。だが、隕石は落ちてくる気配すらしなかった。
魔術というものは自分の視界内でしか発動させることが出来ないのか?
今回の実験では何が失敗だったのだろうか…
考えていると真上で赤い光が見えた。
「……あれは まさか」
その光はどんどん大きくなっていく。
落ちてくるようだ……こっちに向かって
「ハハッ やばいな……成功した時のこと考えてなかったわ」
そんなことを言っている間にも、隕石はどんどん近づいてくる。
思ったより隕石が大きく逃げ場はない。
隕石が地面に到達するのは、スピードから考えてあと一分ほど……迷っている暇もない。
そう判断した俺は、即座に魔法を展開した。
右手で大気を熱している間に左手で火と水の魔法を発動。水蒸気を発生させる。
すかさず下から風を送り込み、発生した雲を押し上げる。
発生した雲を冷やしつつ、再び風を送り込む。最後に、そうして出来た積乱雲を思いっきり温めることにより低気圧が発生……そこに反時計回りの風を送り込む。
思った通り台風が発生した。
「まだだ」
発生した台風の中にありったけの火魔法を叩き込む。
「炎の暴走風」
考えてはいたが、実行することの出来なかった混合魔法の一つだ。成功してよかった……
この魔法を発動させるまで、およそ十五秒。
隕石が地面と衝突するまで、あと四十秒ほどか……これだけあれば十分勢いを弱められる。
そう思った時には俺が発動させたフレイムストームは、隕石によってかき消されていた。
それを見て再び魔法を発動させようとするが、急な目眩に襲われる。魔力切れだ。
意識が薄れる中……俺が見たのは隕石に立ち向かう二人の背中だった。
ルイの所へ向かう途中、俺は、龍神から貰い受けた 魔剣「神殺し」 どんなに硬い装甲を持つ者でも、この剣に切られたものは無傷ではいられないと言われている剣を……
ミリアは、天空神から貰い受けた天界の秘宝「創造神の涙」 先端部分に特殊な魔石がついており、その魔石により消費魔力を抑え、なおかつ魔術の効力や威力を倍増させると言われている杖が握られている。
この二つは神器と言われており、しかるべき人が神器を使えば、大陸をも滅ぼすことが出来ると言われている。
今回は、世界に存在する十の神器の内の二つを使わなければいけないほど危険だと二人の本能が告げていたのだ。
「「なーーー……」」
二人がルイの元へ来た時に見たものは、世界中に行ったことのある二人でさえも目を疑うような光景だった。
空から隕石がルイに向かって落下しており、ルイが魔法により発生させた台風で何とかしようとしていたのだ。
「なんだあれは……」
「私もあんな魔術見たことがない」
その光景を見て一瞬硬直する……だが、ルイが発動させた台風が隕石によりかき消されるのを見て、二人は我を取り戻した。
「レイ」
「おう」
「付属魔法 身体能力解放」
私はレイの身体能力を底上げする。
「天神流 二の型 "五月雨"」
底上げされた身体能力で隕石を細かく切り刻む。
「何っ⁉︎」
が、表面しか斬ることが出来なかった。
「ミリア‼︎」
「わかってるわ。 闇の機関砲」
レイが細かく切り刻んだ隕石を、一つもうち漏らすことなく空中で撃ち落とす。
眼前に迫った隕石の核は思った以上に硬い。天神流では叩ききれないと判断し、龍神流に切り替える。
「龍神流 音の刃」
剣を高速に振動させ、隕石の核を力技で四つに切り刻む。
「ミリア ラストだ」
「わかったわ」
炎 水 光 闇 四つの種類の違う魔法を同時に発動させる。それを一つ一つ大きな矢に変形させ、隕石の核に向けて放った。
「虹色の矢」
今回は四色だが、本来ならば 雷 土 木 が追加される。違う種類の魔法を使うことで相手の弱点を確実に突くことが出来る。
「……終わったな」
「ギリギリだったわね」
俺達がルイの元へと辿り着いた時には、あと十秒ほどで隕石がルイに当たる距離まで来ていた。そこから、ルイを巻き込まないように技を選ばなければいけなかった。
あと一秒遅かったら間に合わなかったかもしれない……
「ミリア、どう思う?」
「やっぱり、この子が起こしたことだと思う」
「ミリアもそう思うか……」
(おそらく)魔力切れで倒れているルイを見ながら呟く。
もし、そうなら早いとこ魔術のコントロールを覚えさせなければいけないな。
そんな事を考えていると辺りが騒がしくなる。
先程の隕石を見た人がちらほらと集まってくる。平和なフォレムでは滅多に無いことだから野次馬がやって来たのだろう。
………まあ、こんな事はどこに行っても滅多に無いのだが。
俺達はルイをメイドにベットまで運ぶように指示をした。
………ルイが起きたら問い詰めなければ
そんな事を胸に俺達は、野次馬の対処に当たるのだった。




