手紙
イザベルが帰った後、破壊された扉の片付けをしていると、机の上に手紙が置かれている事に気が付いた。何気なく手に取り、差出人のところを見る。
「差出人は……ジン?」
差出人がジンだった事から俺は特に警戒せずに手紙を開いた。そのに入っていた紙に書かれていたのは見た事のない魔法陣。それを目にした瞬間頭の中で警鐘が鳴らされる、と同時に魔法陣が白く光り輝いた。
「しまっ……」
俺は紙を放り捨てて回避しようとしたが、時既に遅く俺は光に飲み込まれてその場から姿を消すこととなった。
どうやらあれは転移魔法陣だったらしい。俺が飛ばされた先は辺り一面が闇で包まれ数メートル先の光景も見えない場所だった。
「取り敢えず……光球」
光源を作り出す為に何気なく下級魔法の光球を発動させた。下級魔法では魔力は殆んど消費されない。現在地がわからない今、魔力を温存する適切な判断のはずだった 。
「なっ!?」
下級魔法の光球を発動した筈なのに通常の二十倍程の魔力━━帝王級に匹敵する━━が消費される。
ルイスの発動した光球の数は十数個、その全てが二十程になったことにより、ルイスの全魔力の内の約五割が消費される事になってしまった。
そして、通常の何倍もの魔力を消費するという性質と光球によって露わにされた血のこびり付いた壁を見てルイスは気付いた、気が付いてしまった。
「は、ははは……マジかよ」
ジンが伝説の男と呼ばれる様になったきっかけであり、ジンでさえも中層までしか踏破する事の出来なかった最凶最悪の迷宮。
「迷宮アイテール」
ルイスの迷宮攻略が始まる事となった。
転移させられた事はグチグチ言っても仕方がない。今最優先するべき事は状況の確認だ。俺は頭を切り替えて状況の確認を始める。
食料や水は買い込んだ分がまだまだあるから大丈夫。武器については直ぐに決まった。俺が持っている武器の中で実戦で使える最高レベルの武器は、今の所神殺しと二刀の小太刀のみ。なのでこれは状況に応じて使い分ける事にする。
問題は防具だ。
俺の体にはオリファルコンの鎧などはサイズが合わないし動きを阻害するので論外。となると残るは魔物の素材を使った物と使用者のサイズに自動的に合わせてくれるマジックアイテムと呼ばれる迷宮からしか手に入れられない防具を装備する事にした。装備した防具の見た目はオリファルコンの鎧と比べて地味に感じるが、籠手にはオリファルコンとアダマンタイトなどの希少な貴金属の合金が使用してあったり、上半身の軽鎧には成竜とSランクモンスターの鋼蜘蛛の糸をふんだんに使用して編み上げた物など、ジンクラスでないと持っていないと思われる防具の数々を装備している。
防具のサイズが合うかどうかという問題は、丁度道具袋に入っていたので事無きを得たが、これ程まで高品質な物を持っていた袋の持ち主を葬る事が出来た天ちゃんは一体どれ程強いのだろうと首を傾げたのは余談である。
「よし、行くか」
準備が出来ていることを確認したルイスは先に進む為に歩き出した。
作者の都合によりルイス君には迷宮に飛ばされて貰いました。
次回は久々の戦闘シーンがあります。




