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八七月短編集

ハッピーエンドは望まれない

作者: 八七月

アンチハッピーエンドの私が幸せについて考えた結果。

世界はハッピーでなくてはいけない。

全ての人が救われ、全ての人が幸せになる物語。

誰もが望み、夢であると一度は諦めた世界。

それにもしなれたとしたら、どれだけの人が救われるのか。私は愉しみで仕方がなかった。


「…待ってなさい。必ず私が幸せにするわ。」



私はニコニコと穏やかな笑みを浮かべた、それは皆に指し示す幸せの合図であるように突如世界はその様を変えた。






世界は幸せで満たされた。

誰もが恋をし、誰もが痛い目に合うこともなく。

苦しい目に合うことのない素敵な世界。

口々に伝うのは喜びの祝詞。苦しいだけの現実は満たされるだけの極楽に変わる。

幸せとは満たされること。満たされない者のいなくなった世界に不幸せなど存在しえなかった。



「…みんな幸せになったわ。とっても満足よ私。」



更に笑みを深める私は出来上がった世界を満足げに見つめ、やがて眠りについた。






幸せは長く続かなかった。

人には様々な感情があり、人それぞれ感じることもまた違う。様々な幸せが矛盾を生み、やがて幸せは枷となる。

満たされるはずの感情に疑問を覚え、作られた幸せに反発する人々。

この手に勝ち取るべき幸せが常に存在する為か、争いこそ起きないが世界はゆっくりと衰退の道へと進む。

幸せとは停滞と同義であり、争いがなければ新しいものは生まれない。

やがて世界には死が蔓延る。幸せで満たされた生物は生きていくための足掻きさえ忘れてしまったようである。

何年もかけゆっくりと生物のいない世界となってから、私はようやく目覚めた。



「…あれれ?なんで生き物がいないの。皆幸せになったはずなのに」



疑問を覚える私、幸せにしたはずの者は手を擦り抜け全て無へと帰った。

何もない世界になったのを私は見て、理解が出来ず仕方がないので生物を再び生き返らせる。

再生の力が世界へと浸透し、再び世界に生物が息を吹き返す。

無論生き返らせたばかりの生物は幸せを理解できない。

すぐに争いをはじめ、苦しいだけの現実に世界は彩られる。

彼女は再びかけることとした。最早聞き慣れた、あの言葉を



「…待ってなさい。必ず私が幸せにするわ」


無限ループって怖くね?




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