第6話 事件解決
私は、エリックギルド長を含めた四人が待つ別室へ戻った。
すぐさまギルド長が口を開く。
「どうだね?討伐したパーティーは分かったかね?」
「はい、ギルド長。本物の討伐パーティーが分かりました。――いえ、正確には“分かっていません”が」
「……どういうことだね、シャロ君。早く説明してくれ」
「そうよ!早く言いなさいよ!アタシのパーティーが本物って!」
リンネも苛立たしげに声を上げる。
「まあ、落ち着いてください。今から説明します」
私は胸元のポケットに挟んでいたメガネをかけ、三人を見渡した。
「結論から言います。今回のカブトドラゴン討伐――本物の討伐パーティーは、この中にはいません」
「なっ……!どういうことだね、それは!」
「単純な話です。ギルドの記録で確認できるのは、“承諾日”と“担当受付嬢”だけ。担当本人でなければ、誰が受注したかまでは特定できません」
私は淡々と続ける。
「つまり――記録通りの証言をすれば、誰でも“本物らしく見える”」
「だが、討伐の証拠のツノだってあるだろう?」
「ええ。その“ツノ”こそが偽物の証拠です」
私は机の上の三本を指し示した。
「よく見てください。どれも、あまりに綺麗すぎる」
「……綺麗だと、何か問題があるのかね?」
「大ありです。相手はSランクのドラゴンですよ。戦闘中、最も危険なのはツノ。なら真っ先に破壊を試みるはずです」
一呼吸置く。
「そんな部位が、三本とも無傷に近い――そんな都合のいい話、あると思いますか?」
場が静まる。
「つまり、これらはすべて偽物。ギルドが“真贋判定できない”弱点を突いた、偽装工作です」
「……」
「そして三人で同時に現れ、“どれかが本物だ”と思わせる。こちらに選ばせるのが狙いだった」
私は軽く肩をすくめた。
「――つまり、三人は共犯です」
その瞬間、三人は顔を見合わせ――一斉に外に駆け出した。
「逃がすな!」
後日。
王都の警備隊に捕まった三人は、あっさりと犯行を認めた。
彼らは偶然、同じ日にギルドに居合わせていたらしい。
そこで担当受付嬢ノノンの“二日後はデートで休み”という話を聞き、この計画を思いついたという。
Sランクの実力がありながら――やったことは、ただの小細工。
……なんとも、もったいない話だ。
数日後。
私はいつものようにカウンターに頬杖をつき、冒険者たちの喧騒を眺めていた。
そこへ――ボロボロのパーティーが近づいてくる。
慌てて姿勢を正し、営業用の笑顔を浮かべる。
「お疲れ様です。本日はどのようなご用件で?」
リーダーらしき男が、疲れた声で言った。
「《光焔の天翼》のリーダー、勇者レインだ。……カブトドラゴンを討伐した」
「――っ!?」
一瞬、言葉を失う。
「……ありがとうございます。では、討伐の証拠であるツノを――」
「ああ、それがな」
男は頭をかいた。
「戦闘に夢中で、ツノ……壊しちまってさ。証拠が残ってないんだ。これじゃ報酬は無理だよな?」
「……」
私は固まった。
数秒後。
「……っ、ふ」
無理だった。
笑いがこみ上げてきて、止まらなかった。




