第2話 三組のパーティー
カブトドラゴンの討伐をしたと言ってきた三人はSランクパーティーのリーダーたちだった。
「はぁ!?俺たちが倒したに決まってるだろうが!」
真っ赤な髪の魔導士、ウィルスが机を叩く。
「ちょっと。声が大きいわよ。討伐したのはアタシたち《天使の会合》よ」
リンネは腕を組み、余裕の笑みを浮かべる。
「まあまあ。争う必要はないだろう?」
銀髪の青年、アルスは穏やかに微笑む。
だがその目は、笑っていない。
三者三様。
だが主張は同じ。
一体どういうことなんだ…
ドラゴン討伐クエストの証拠としてドラゴンのツノは持ち帰ることは常識だ。しかし、カブトドラゴンはツノが一本の生物。
複数持ち帰れるはずがない。
森林に生息していたカブトドラゴンも一匹と聞いている。
嘘をついているパーティが二組いるのか…?
それなら本物のパーティーを見極めないと…
「シャロ君どいて!この方たちはワタクシが担当するから」
…出た。
高ランク案件専用おじさん。
ギルド長のエリックが無理やり受付を代わってきた。
普段は奥で紅茶を飲んでいるくせに。
「あぁ…ひとまずありがとうございます。ご案内はワタクシがいたしますので、どうかここではお静かに」
まぁどちらにせよ、事情を聞かなければ何も始まらないだろう。
「とりあえず、別室に移動しましょう。各々事情を聞きますので」
…と、エリックギルド長は彼らが喧嘩しないよう牽制しつつ、ギルド内の一室に案内する。
私もついていくことにする。
なぜならここで私も久しぶりの謎解きができるかもしれないから。
ここに転生してから、謎に出会ってなかったかしね!
「えっ!シャロ君着いてくるの?君は他の業務をしていなよ」
「いえ…このお客様方はSランクパーティのリーダー様達、スムーズな接客をするためにもお手伝いいたします!」
「そ…そうだな…。確かにそれは一理ある。お願いしよう」
この人は出世を狙っているからな。この言葉には弱いだろう。
他の受付嬢の話だと、どうやらこのギルドを王都直属のギルドにしたいらしい。
そうなれば、各パーティーに依頼できるクエストも増えて、自ずと自分達ももっと稼げるようになるというわけだ。
まぁ…私は興味ないけどね。
残業はしたくないな。
私とエリックギルド長は彼らを別室に案内し、3人のことについて聞いてみた。
3人それぞれの特徴は下記だった。
まず一人目。
Sランクパーティ《竜の舞踏会》 リーダー、剣士アルス。
銀髪の青年で、穏やかに微笑むイケメン。
二人目。
同じくSランクパーティー《天使の会合》
リーダー、回復士のリンネ。
ピンク色の髪で、いかにも高飛車な女。
そして、最後に三人目。
Sランクパーティー《悪魔の研究室》
リーダー、魔導士ウィルス。
青髪の男で、1番イライラしている。
この世界のパーティーは、自分達のパーティーランクごとにスタンプを有しており、そのランクスタンプをクエストの依頼書に押すことで、クエスト承諾となる。
ただ、それは危険なクエストにパーティーを向かわせないためのスタンプで、個人を特定できるわけではない。
今回、こんなことが起こってしまったのは、これが原因だろう。
「ひとまず皆様、パーティーのランクの証拠となるスタンプを見せていただけますか?」
エリックギルド長が、三人に問いかける。
パーティーが受けられるクエストは、自分達のランク以下のクエスト。
ひとまず、みんなスタンプを有しているか確認するのはいい選択だろう。
「そんなの当たり前に持っているに決まってるじゃない」
「僕ももちろん持ってるよ」
「俺も当たり前に持ってるわ」
三人とも、スタンプを差し出す。
しっかりSランクのパーティーが持つ、黄金色のスタンプだ。
これらのスタンプは持ち手に、王都の紋章が刻まれている。これは、王都直属の魔導士によって刻まれてたもので、偽造することはできないだろう。
しかし、どうしたものだ。
もちろん分かってはいたが、判断のしようがない。
「皆さん、ありがとうございます。どれも本物でございます。しかし…困りましたね。皆様、本当にドラゴンを倒されたのですよね?」
エリックギルド長は恐る恐る聞く。
「もちろんよ。そもそも、そうでなきゃここには来ないわ」
「ドラゴンが複数いて、お三方のパーティーで協力したわけではないのですよね?まぁ、ワタクシ達のギルドといたしましても、カブトドラゴンは一匹で依頼していますし、報酬は一匹分しか差し上げることはできませんが…」
「はぁ?ドラゴンは一匹だっての。こんな奴ら知らねぇよ。そんなことより、早く報酬よこせ」
魔導士のウィルスが叫ぶ。
「いやいや…僕のパーティーが本当に倒したんだよ。もちろん、ドラゴンは一匹。他の二人はきっと偽物だよ」
「アタシのパーティーこそ、本当の一匹を倒したわ」
各々が自分が本物の一匹を倒したと主張する。
今回の報酬は一億マーネ。
贅沢な暮らしを目指さなければ、ここから働かなくても、生きてはいける額ではあるがゆえ、そう簡単に嘘でしたとも言わないだろう。
一体どうしたものか…




