第12話 同行者
倉庫前。
机の上に受付の紙が一枚置かれていた。
ひよりが線を引き直して、欄の幅を揃えていた。
早瀬が戻ってきた。
額に汗が残っていた。
「篠宮さん」
「二年二組には伝えました」
「次は二年一組に行ってきます」
「お願い」
「外へ出るなら先に倉庫前に来て」
「その際に戻る目安も言うように」
「おねがいね」
「はい」
早瀬は廊下へ向かった。
校門側の角に朔が立っていた。
通路の真ん中を空けて、人がすれ違える幅を残していた。
「立ち止まるな」
「校内へ戻れ」
覗いた生徒が二歩下がった。
そのまま歩いていった。
悠斗は受付の紙を見た。
【受付(共通)】
・区分=外出/未確認外出/未帰還者/帰還
・名前(読み)
・場所(教室/校門/裏口)
・時刻(何時何分)
・記録者(確認係)
・同行者(見届けた人)
ひよりが鉛筆の先で区分欄を一度だけ指した。
「外へ出る人は、ここに書いて」
「戻っていない人が出たら、未確認外出にしてここに書くから」
「貼り紙が出たら、区分だけ未帰還者に変えます」
悠斗は頷いた。
「問題は、ここを通らずに勝手に動く人だ」
ひよりは鉛筆を置かずに言った。
「だから教室まで早瀬さんに伝えに行ってもらう」
二年一組の方向から足音が走ってきた。
靴が床を三回鳴らした。
男子生徒が倉庫前で止まった。
肩が上下している。
「篠宮さん!」
「二年一組で、外に行くって言ってる人がいます!」
ひよりが顔を上げた。
「だれ?」
「その人の行き先はどこ?」
「名前はわかりません」
「行き先は校門って言ってました」
悠斗が言った。
「本人をここへ呼んでほしい」
「一人で勝手に動かせないように」
朔が角の向こうへ声を投げた。
「二人で来い」
「ひとりで勝手に行くな」
返事が返ってきた。
「はい!」
ほどなくして二人が来た。
先頭の男子が唇を噛んでいた。
「行かせてください!」
「家に連絡しても誰もでないんです」
ひよりは紙の上を指で一回だけ叩いた。
トン。
「ここに書くから」
「あなたの名前を言って」
「……まつだ」
「……まつだ、こうた」
ひよりはひらがなで書いた。
まつだ こうた
「行き先は校門でいい?」
「戻る目安は何時ごろ?」
「校門です」
「今から一時間後くらいです」
ひよりは区分を外出にした。
場所を校門にした。
時刻を入れた。
・区分=外出
・場所=校門
・時刻=__:__
ひよりが言った。
「同行者を一人つけてほしい」
「戻ったら、ここに来ること」
「戻った時刻も書くから」
二年一組のもう一人が手を挙げた。
「俺が一緒に行きます」
ひよりは同行者欄に書いた。
同行者=___
悠斗が言った。
「校門の前で立ち止まらない」
「貼り紙は触らない」
「何か変だと思ったら戻ること。いいか?」
二人は頷いて歩き出した。
倉庫端末が鳴った。
ピ。
白い表示が出た。
《外出扱いは記録を要する》
ひよりは画面を見て、次に紙を見た。
時刻欄を鉛筆で一度だけなぞった。
「端末も同じね」
「書いてない外出は通らない」
悠斗が言った。
「だから出る前に、ここに来て書かせる」
「名前と行き先と戻る目安を」
早瀬が戻ってきた。
「篠宮さん」
「二年一組と二年四組にも言いました」
「ありがとう」
「次もお願いね」
「はい」
悠斗は廊下の先を見た。
閉じた扉がまだ多い。
これから外出希望者が増えてくるのだろうか。




