囁かれた名前
Avelinアヴェリンです。
第7話では、玲司がサラを社交場に連れ出し、
周囲に「俺の女だ」と宣言しました。
けれどその夜、パーティーの裏でサラの耳に届く“ある名前”が、空気を変えていきます。
今回は、その小さな一言が新たな波紋を呼び起こす瞬間をお届けします。
シャンパンの泡が静かに弾ける音。
人々の笑い声と、グラスが触れ合う軽やかな音が混ざり合う。
煌びやかな会場の片隅、私は一息つこうと廊下へ出た。
背後から小声が聞こえる。
「……あの人、**京司**に似てない?」
「いや、まさか……」
心臓が小さく跳ねた。
京司――聞いたことのない名前。
けれど、妙に耳に残る響き。
振り返ると、ふたりの女性がこちらを見て、すぐに目を逸らした。
(誰……? そして、どうして玲司と結びつけるの?)
考えを巡らせる間もなく、背後から低い声。
「……何してる」
驚いて振り返ると、玲司がそこにいた。
「少し、涼みに……」
「一人でうろつくな」
腕を取られ、会場へと戻される。
その手の力は、少し強すぎて、逃げ道を塞ぐようだった。
ダンスホールの中央、彼の腕の中で揺れるたび、
京司という名が胸の奥で反響する。
「何か……聞こえたのか?」
不意に耳元で囁かれ、息が詰まる。
「……名前、みたいな……」
玲司の瞳が一瞬だけ、氷のように冷たく光った。
「忘れろ」
それだけを告げ、強く抱き寄せられた。
甘く包まれているのに、背筋を撫でる冷たい感覚。
(どうして……?)
答えはまだ、闇の奥に隠されたままだった。
お読みいただきありがとうございます。
「囁かれた名前」――それは玲司の過去とどう関わるのか。
京司という名前がサラの胸に残り、彼女は知らず知らずのうちに危険な扉の前に立っています。
次回、偶然の再会がその名前の意味をさらに深め、玲司の表情を曇らせます。
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