見せつける理由
Avelinです。
第6話で玲司が口にした「俺の過去に触れるな」という言葉――
その余韻が消えないまま、サラは新たな夜へ踏み出します。
今夜、玲司が連れて行くのは、
彼の世界の中でも特別な場所。
そこでサラは、“甘さ”と“危険”が同居する彼のもう一つの顔を目の当たりにします。
車の窓越しに夜景が流れる。
沈黙が続く中、ハンドルを握る玲司の横顔は、街灯に照らされて硬く見えた。
(……あの声、まだ耳から離れない)
怖いはずなのに、なぜか胸の奥が熱い。
冷たさと温かさが、同じ場所で渦を巻いている。
「今日は……お前を連れて行く場所がある」
不意に声が落ちてくる。
「どこですか?」
「俺の知ってる奴らに……お前を見せてやる」
見せる――その言葉に、ざわりと胸が波立つ。
理由を聞く前に、車は高級ホテルのエントランスに滑り込んだ。
シャンデリアが輝くロビーを抜けると、
着飾った人々の視線が一斉に向けられる。
腰に回された玲司の手が、逃げられないように
軽く力を込めた。
「……離れられないだろ」
耳元にかすかな笑い声。
(離れたくない……? いや、違う)
頭では否定しているのに、身体は逆らわなかった。
グラスを片手に近づいてきた男が、私をじろりと見る。
「その女性は?」
玲司の瞳が、氷のように冷えた。
「俺の女だ。触るな」
一瞬で空気が凍る。
男は軽く笑い、肩をすくめて去っていったが、
周囲の視線は鋭さを増した。
バルコニーに出ると、夜の風が熱を奪っていく。
「どうして……私をここに?」
玲司はしばし黙り、低く答えた。
「俺のものだって、全員に覚えさせるためだ」
甘さに似た響き。
でも、その奥にあるのは“檻”の鍵の音だった。
「俺の隣が一番安全で、一番危険だ」
囁きが首筋を撫で、心臓が跳ねる。
(安全で、危険……)
夜景の光の中で、私はその意味をまだ知らない。
お読みいただきありがとうございます。
「見せつける理由」――それは愛の形か、檻の宣告か。
パーティーの熱気と緊張が交差する中、
玲司の独占欲は一層強くなります。
次回、パーティーの裏で囁かれる“ある名前”が、
サラの耳に届き、物語は過去の影に踏み込んでいきます。
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