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【完結・1万PV突破】御曹司に拾われて、毎日甘く独占されています!〜その溺愛、ちょっと怖いんですけど!?〜  作者: Avelin


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33/40

救いの手 ―双子の真実―

揺れる恐怖と、差し伸べられる救い。


第32話では“月下香”の香りが、玲司の本質を暴き出しました。


恐怖に震えるサラの前に現れたのは――蓮、そして京司。


第33話では、ついに双子としての真実が明かされ、

サラの運命は大きく動き出していきます。



(……怖い……どうして……?)


体が震えている。


玲司さんの手が、私の腕を強く掴んで離さない。

冷たいはずの瞳が、今は異様な熱を帯びていて――


視線を向けられるだけで、息が詰まる。


「サラ……お前は絶対に逃がさない」


その声に、全身が凍りついた。



――ガッ。


「やめろ!」


蓮さんが私と玲司さんの間に割って入った。


背中で私を庇うように立ちはだかり、

怒気を孕んだ声で叫ぶ。



「……お前……雇い主の俺に逆らって……

許されると思っているのか!」



玲司さんの怒声が響く。

だけど蓮さんは一歩も退かない。


(……蓮さん……どうしてここまで……?)


その背中は、ただのボディガード以上の

強さと覚悟を感じさせた。



私はその温もりに、ほんの少しだけ救われていた。



――そのとき。

下から車のクラクション音が聞こえてきた。



「迎えが来ています!」


蓮さんが短く言い、私の腕を取って走らせた。



玲司さんの手が掴みかかる。

けれど蓮さんが強引に道を開き、私を出口へと導いた。



タワーマンションの前に停まっていた黒い車。

秘書が迎えに来たと思い、私は息を切らしながら後部座席に乗り込んだ。



急いで、ドアを閉めた。

ふと顔を上げると――

深く帽子を被った男が、静かにそれを取った。



「……サラ」


優しく呼ぶ声。

その顔は――京司さんだった。



「京司……さん……」


力が抜ける。



恐怖で張りつめていた胸が、一瞬にして解けていく。

車が走り出し、窓の外の光が遠ざかっていく。



「蓮は僕の部下だ。玲司のそばに置いたのは、

君を守るためだった」


京司さんが低い声で告げる。



「……守る……ために?」



「玲司だけじゃない。君を狙う影がいる。

だから蓮に監視を任せていた」


(……玲司さん以外に……黒幕が?)


胸の奥に冷たい疑念が広がっていく。


京司さんは少し間を置き、まっすぐに私を見つめて告げた。



「サラ。俺たちは――双子なんだ」


「え……?」


鼓動が跳ねる。


双子。

その言葉が胸に深く刺さり、息をのむ。



「玲司は……自分で壊してしまったものを、今も探している。

けれど、それはもう二度と手に入らないんだ」


(……何を壊したの……?)


けれど、彼が何を壊したのか――

京司さんは言わなかった。



その沈黙が、逆に胸をざわめかせた。

やがて車が止まり、広大な屋敷が目の前に現れた。



「ここは……?」


「僕の住んでいるところだよ」



京司さんが穏やかに微笑む。

その瞬間――私は気づいてしまった。


(……本当は……京司さんが……)



屋敷の一室。


「疲れたでしょ?この部屋で少し眠るといいよ」


月下香の香りに包まれて、私はベッドに横たわった。



京司の声は穏やかで、包み込むように優しい。

私の頭にそっと手を置き、柔らかく撫でてくれた。



胸の奥に温かさが広がっていく。

その優しさに触れた瞬間、張りつめていた心が静かに緩む。



白い香炉から漂う“月下香”の甘い香りが、空気を満たしていった。

夜に咲く花のようなその匂いに包まれると、まぶたが自然と重くなる。



京司の低い声が、子守歌のように耳に残って――

眠りの中で、夢を見る。



夜の温室。

白い花が星のように輝き、甘く濃厚な香りが漂う。


――その中で。


「サラ……大きくなったら……」



白い花を差し出す“あの少年”の声。


――そこで夢は、無理やり切り裂かれたように途切れた。



(……あの少年は……京司さん……?)



夢から覚めた私の額に、京司さんの手がそっと触れた。



「無理に思い出そうとしなくていい。

君の気持ちを一番大事にするんだ」



優しい声。

頭を撫でる仕草。



「いい香りがするね、サラ」


「……」


「この香りは、僕も一番好きな香りだ。大切な人との思い出だから」


(……感謝だけじゃない……この気持ち……)


胸の奥が静かに揺れていた。




――その時。


スマホが震えた。

画面に浮かぶ文字――



「絶対に……お前は離さない」



玲司さんからの、狂気に満ちたメッセージ。



血の気が引き、全身が氷のように冷たくなる。

再び押し寄せる恐怖に、息をのみ、指先まで震えが走った。


(……逃げられない……?)


心臓が胸を破りそうに打ち続ける。

けれど、その隣で京司さんの手が静かに私の肩に触れた。



「大丈夫だ。君をもう一人にはしないからね」



その穏やかな声と温もりが、張りつめた心をかろうじて支える。



闇の中で差し伸べられる光のように――。



それでも。

この時の私たちは、まだ知らなかった。




玲司の狂気が、どこまで深く続いているのかを。


第33話では、玲司の歪んだ愛と京司の優しさが

鮮烈な対比となって描かれました。


恐怖と救い、その狭間でサラは決意を迫られます。


そして最後に届いた玲司のメッセージ。

それは狂気の予兆にすぎません。


これまでブックマークや評価をくださった皆さま、

本当にありがとうございます。


一つ一つが、物語を紡ぐ大きな力になっています。


物語はついに佳境へ――

完結まで残り7話となりました。



次回、第34話――

深まる記憶の謎と、双子の愛憎が新たな局面を迎えます。


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