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禁断の檻 ―揺らぐ双影―

第27話では、ついに“微笑む影”との出会いが描かれました。


玲司と京司、そして悠真――

三つの影が交錯する中で、サラの心は大きく揺れ始めます。


今回の第28話では、その揺らぎがさらに深まり、

誰を信じるべきかが試されていきます。



「……京司さん?」



震える声で、私はようやくその名を口にした。



助けてくれた――。

私を、あの黒い影から庇ってくれた人。


目の前の彼は、落ち着いた微笑みを浮かべたまま、優しく頷いた。



「うん。……無事でよかった。怖かったでしょう?」



その声音は、驚くほど穏やかで、包み込むように柔らかかった。

思わず胸の奥がじんわりと熱くなる。


(……この人……本当に玲司じゃない……)


冷たい檻のような腕で縛ってくる玲司とは、あまりにも違う。



同じ顔なのに――どうしてこんなにも、温度が違うのだろう。

私は小さく息をのみ、勇気を振り絞って言葉を続けた。



「……私の知り合いに……すごく、似ているんです」


ほんの少し震えた声。

でも、彼は否定もせず、優しく目を細めた。



「そっか……。でも――」


彼はゆっくりと私の顔を覗き込み、

ほんの少しだけ、いたずらっぽく微笑んだ。



「僕の方が……優しいでしょ?」



その一言に、心臓が大きく跳ねた。


けれど、不思議と怖くはなかった。

私は気づけば、小さく頷いていた。


(……本当に、そうかもしれない……)


彼の笑みは、檻の中で冷たく私を縛る玲司とは正反対。


心の奥に、柔らかい光が差し込むのを感じた。



「また……会えますか?」



気づけば、そんな言葉が唇から漏れていた。

京司は静かに頷いた。




「必ず。……でも今は、気をつけて。

あなたの周りには、影が多すぎる」



その声はあまりにも優しく、けれど同時にどこか不吉な響きを帯びていた。




家に戻った瞬間、冷たい視線が私の全身を縛りつけた。



「サラ。……どこへ行ってた?」



胸が詰まる。けれど、言葉が出ない。

玲司の瞳は鋭く光り、私の沈黙を許さない。



その横には、三人のボディガードが無言で立ち並んでいた。


(……三人は、いつの間にここへ戻っていたの……?)


玲司は私の顔を覗き込み、不安を探るように低く問いかける。



「……何かあったのか?」


けれど、私は喉が詰まり、声が凍りついたように一言も出てこなかった。




そして――。


「……悠真から、何か連絡があったのか?」



玲司がそう言った瞬間、胸が強く跳ねた。


(……悠真さんに私の連絡先を教えたのは……玲司なの?)



隣に立つ蒼真の表情が、かすかに揺らいだ。



ほんの一瞬。

鋭く冷たいはずの瞳が、驚きに滲むように細められ、

固く結んだ唇が、かすかに震えた。



(……今、蒼真さん……?)


それは、普段の無言の威圧感とは違っていた。

押し殺された動揺が、確かにそこに滲んでいた。


何気ない仕草に見えるかもしれない。

けれど私の胸には鋭い棘のように刺さり、ざわめきを残した。


玲司は気づいていない。

だが――私の目には確かに映っていた。



(……どうして。悠真の名を出した時だけ……?)



その疑問が胸に渦を巻いた瞬間、冷たい指先が頬に触れた。


現実へと引き戻すように、玲司が低い声で囁く。



「俺を裏切るな。……俺のそばにいる限り、お前は安全だ」



その言葉は甘い檻の鎖。

抗えない力で、再び私を絡め取っていく。



けれど胸の奥では、あの声がまだ響いていた。



「僕の方が……優しいでしょ?」



微笑みを思い出すたびに、心の奥で何かがきしむ。




檻の中で揺れる私に、玲司の瞳が鋭く突き刺さる。

その眼差しはさらに冷たさを増し、私の心を逃さない。



「――サラ。……京司に会ったのか?」



息が止まった。

心臓が、凍りつく。


第28話では、京司の温かさと玲司の冷酷さが鮮明に対比されました。


そして蒼真の一瞬の動揺が、物語に新たな疑念を生み出しています。


サラを取り巻く檻は、ますます複雑に絡み合っていくでしょう。



次回、第29話。

ついに御曹司たちの影が、決定的にぶつかり合う時が訪れます。


これまでブックマークや評価をいただいた皆さま、本当にありがとうございます。


一つ一つが物語を紡ぐ力になっています。


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