揺らぐ檻 ―二つの影―
第22話では、街中で「玲司のように見える人物」がサラの前に現れました。
明るく手を振る姿は、決して玲司ではありえない仕草――。
そして夜、玲司から投げかけられた問いかけは、
サラの心を凍りつかせました。
第23話。
禁断の檻に差し込んだ“二つの影”は、
サラの心を揺るがし、やがて誰も知らない
真実への扉を開いていきます。
――愛か、偽りか。
その境界線が、今、静かに崩れ始めていた。
「……サラ、今日は何して過ごしたの?」
静かな声だった。
だがその奥に潜むものは、冷たい氷の刃のようだった。
「……えっ?」
反射的に声が漏れる。胸の奥がざわつき、呼吸が浅くなる。
昼間の光景が、脳裏に蘇る。
明るく笑って、大きく手を振ってくれた“玲司”――。
けれど今、目の前にいる玲司は、氷のように冷たい表情を崩さない。
(じゃあ……あの人は、誰……?)
喉が乾く。言葉が出ない。
玲司は一歩近づき、私の顎を軽く持ち上げた。
逃げられない距離。
冷ややかな瞳が、深く私を見下ろす。
「俺が知らない時間……何を見て、誰に笑った?」
吐息混じりの囁きに、背筋が震える。
答えたいのに、声が出ない。
――そのとき。
「サラさん、大丈夫ですか?」
リビングの扉の向こうから、蓮の声がした。
私は咄嗟に助けを求めようとしたが、玲司の指が唇を塞いだ。
「余計なことを言うな」
その低い声は、氷と炎を同時に孕んでいた。
扉の外では、蒼真と隼人の気配もする。
だが彼らは入ってこなかった。
まるで――「何か」に気づきながらも、踏み込めないように。
私は悟った。
彼らもまた、今日の“違和感”を共有している。
(あの笑顔……やっぱり玲司じゃなかった。
でも、なら誰なの……?)
胸の奥に芽生えた疑念は、不気味な影となって広がっていく。
玲司の腕の中、私はただ震えていた。
彼の囁きが、耳の奥に深く突き刺さる。
「お前は俺の子猫だ。
誰に微笑もうと……その笑顔の意味を決めるのは、俺だけだ」
恐怖と――そして抗えないほどの甘美な囚われ感覚。
二つの感情に引き裂かれながら、私は思った。
(――私は一体、誰に……笑ったの?)
第23話「揺らぐ檻 ―二つの影―」では、
街中で見かけた“玲司そっくりの人物”が
残した違和感が、ついにサラの心を
揺さぶり始めました。
守護と愛の檻は、次第に「疑念」と「支配」の色を濃くしていきます。
京司の影、ボディガードたちの沈黙、
そして玲司の執着。
全ての謎が一本の線で繋がるとき、サラが知る真実は――。
次回、第24話。
檻の外から差し込む“もう一つの影”が、物語を大きく動かしていきます。
ここから物語が急速に動き出します。
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