禁断の檻の影 ―偽りの微笑み―
第21話では、玲司の異常な快楽――
“縛る/解く”という所有の悦びがついに顕わになりました。
守護と支配の境界は消え、サラは「愛されること」と
「囚われること」を同時に味わい始めます。
そして第22話。
日常の買い物という些細な時間の中に、
これまでにない違和感が忍び寄ります。
それは偶然の邂逅か、それとも――。
禁断の檻に新たな影が差す瞬間を、どうぞご覧ください。
週末の午後。
私はボディガードの蒼真、蓮、隼人に付き添われて、
街へ買い物に出かけていた。
いつもの道。
けれど、今日はなぜか胸がざわついている。
(気のせいよね……ただのお出かけなんだから)
そう思いながらも、背後に注がれる三人の視線が重い。
守られているはずなのに、監視されているようで息苦しかった。
──そのときだった。
「あっ!!」
サラは思わず声を出した。
反対側の歩道で、見慣れた顔が手を振っていた。
スーツ姿の男性。明るい笑顔。
秘書らしき女性を連れて歩いている。
(……玲司さん?)
一瞬、心臓が跳ね上がる。
仕事の移動中なのだと勘違いし、
私は思わず笑顔で手を振り返していた。
けれど、隣にいたボディガード三人は顔を見合わせる。
蒼真の眉がわずかに寄り、
蓮は口を開きかけてやめ、
隼人は無言で視線を逸らした。
その違和感に気づいたのは、私だけが無邪気に笑った後だった。
(どうして……? 私、何かおかしいことをした?)
そこには、ただ重い沈黙が流れた。
その夜。
買い物から戻り、私はソファに腰を下ろした。
心の中で、まだ昼間の光景が離れない。
あの明るい笑顔。大きく手を振る仕草。
けれど――玲司はそんなこと、したことがなかった。
胸の奥に広がる疑念を振り払おうとした瞬間。
背後から、低い声が落ちてきた。
「サラ」
振り返ると、玲司が立っていた。
冷静な瞳。昼間の笑顔とはまるで違う、氷のような眼差し。
彼はゆっくりと歩み寄り、穏やかに問いかけた。
「……サラ、今日は何して過ごしたの?」
――その言葉に、呼吸が止まった。
私の唇から漏れたのは、ただ一言。
「……えっ?」
胸の奥を締めつける違和感と、背筋を撫でる冷たい恐怖。
私は、何を見たのだろう。
そして、誰に微笑んだのだろう……か。
第22話「禁断の檻の影 ―偽りの微笑み―」では、
玲司と瓜二つの存在がついにサラの前に現れました。
明るく手を振る“玲司”は、果たして誰だったのか。
彼が笑うことはないはず。
ならば、サラが見たあの姿は――一体誰なのか。
重なる顔、揺らぐ記憶、そして言葉にできない違和感。
全てが謎を孕み、禁断の檻をさらに深く閉ざしていきます。
次回、第23話。
サラを待ち受けるのは、真実か、偽りか。
“隠された御曹司の秘密“が、ついに物語の中心へ――。
隠された御曹司の秘密が動き出す時、サラの運命は大きく揺さぶられます。
衝撃の展開を、ぜひ見届けてください。
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