壊された絆
第12話では、玲司がついに“京司”との関係を語り、
サラはその過去へ踏み込む決意を固めました。
そして今回。
静かな夜に鳴り響いたチャイムが、物語を大きく揺るがします。
現れたのは――サラの“夫”。
その再会は偶然か、それとも誰かの仕掛けなのか。
玄関のチャイムが、不意にけたたましく鳴り響いた。
モニターに映った一人の男性――
その姿を見た瞬間、心臓が大きく跳ねる。
「……ど、どうして……ここに?」
そこにいたのは――私の“夫”だった。
玲司はサラの怯えを鋭く察し、低い声で囁いた。
「……騒ぎになる前に、玄関まで入れよう」
そう言ってインターホンを操作し、
相手を上層階の部屋前へと誘導する。
やがて扉が開く。
そこに立っていた夫は、不気味な笑みを浮かべていた。
「サラ……やっと見つけた」
声を失った私の前に立ちふさがり、
玲司が冷静に問いかける。
「……どうやってここを突き止めた」
低く圧のある声に、夫は口元を歪めて答えた。
「……さぁな。世の中には“親切な人”がいるもんだ」
(親切な人……?)
無意識に背筋が冷たくなる。
――昨日耳にした“京司”という名が頭をよぎった。
まるで、見えない糸で誰かに操られているように。
夫は私に視線を向け、かすかに震える声で言った。
「サラを……返してくれ」
その一瞬だけ、弱さが滲む。
だが次に吐き出された言葉は、あまりに俗っぽく、
人間臭いものだった。
「……じゃあ、金は? 財閥との繋がりが欲しいんだよ。
お前なら、それくらい準備できるはずだ」
私は唖然とした。
(……私を、取引の道具に……?)
玲司の瞳が鋭く光り、迷いなく言い放つ。
「断る」
短い一言が、夫の欲望を真っ二つに斬り裂いた。
「なっ……!」
夫の顔が醜く歪む。
「……お前、わかってんのか? サラを返さなきゃ――」
言葉を続ける前に、玲司はスマホを取り出し、静かに告げた。
「弁護士に連絡する。お前とは縁を切らせる。
それと――恐喝で訴状を送る」
その声は冷静だが、奥には鋼のような決意が潜んでいた。
私は玲司に抱き寄せられ、その腕の中に身を預ける。
けれど胸の奥に浮かんだ疑問は消えない。
(……どうして、夫はここに来られたの?)
偶然ではない。
きっと――この再会は、誰かが仕組んだ。
夜の静寂の中、見えない“影”が笑っている気がした。
お読みいただきありがとうございます。
第13話「壊された絆」では、
サラの“夫”が突如として姿を現し、
玲司と激しく対峙する場面が描かれました。
しかし――彼がここに辿り着けた理由。
それは偶然ではなく、背後で糸を引く
“誰か”の存在を示しています。
その“誰か”が誰なのか――まだ明かされてはいません。
「親切な人」という一言に隠された影。
そして、再会を仕組んだ可能性がある“京司”の思惑。
玲司は迷いなくサラを守り抜きましたが、
この再会は、彼らの関係をさらに深い闇へと
引きずり込む導火線に過ぎません。
次回――
ついに、京司の影が玲司の過去をえぐり出し、
サラの安全を大きく脅かしていきます。
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