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沈黙の理由

Avelinアヴェリンです。


第11話では、サラが玲司の会社で“京司”という

名前がタブー視されていることを知り、

さらにカフェで出会った謎の男と再会しました。



今回は、玲司がついに京司との関係を断片的に語ります――けれど、それはほんの氷山の一角に過ぎません。




「……京司のこと、知りたいのか」



その低い声は、街の灯よりも冷たく、

まるで暗闇の奥から響いてくるようだった。



ソファに腰かけた玲司の横顔は影に沈み、

今にも輪郭ごと消えてしまいそうに見える。



「会社でも……噂している人が……」


私の言葉に、玲司はわずかに目を細めた。



「……そうだったのか、サラ」


重く沈んだ声が、空気を震わせる。



「どうしても話したくないのなら、

無理に言わなくていい」



そう告げた私の声は、気づけば優しさよりも

自分自身を納得させる響きを帯びていた。


(……でも、いずれ知ることになるはず)


胸の奥に、小さな決意が灯る。



「何か……深い事情があるの?」


問いかけに、玲司は目を伏せ、

やがて静かに口を開いた。



「……あいつは、昔――兄のような存在だった」


指先でグラスを転がす仕草。


その瞳は遠い記憶を見つめるように、

過去へと沈んでいった――。




「けど、裏切られた。全部……壊された」


それ以上は、言葉が続かない。



部屋の時計の音がやけに響く。



一秒ごとに刻まれる針の音が、

沈黙をさらに重くする。



その響きは、まるで心臓を締めつける

鎖のようだった。



「裏切りって……何を?」


無意識に問いかけると、玲司の瞳が

ゆっくりとこちらに向いた。



「……話せば、お前も危険になる」


その声は、優しさと警告が入り混じっていた。



沈黙の中で、私は悟る。


この人は私を守ろうとしている――


けれど、その守りは同時に檻にもなる。



(……なら、私は――)


胸の奥で、ひとつの決意が固まった。



逃げない。もっと深く、この人の過去に踏み込む。



「……玲司。私は――」


言いかけた瞬間、窓の外で何かがきらりと光った。



視線を向けると、暗がりに黒い影が

一瞬だけ浮かび、すぐに消える。



(……怖い……あの日と同じだ)



その瞬間、玲司はすっと立ち上がった。



「……部屋の中から出るな」


低く短い指示を残し、玄関へ向かう。



(一人に……しないで……)



声にしようとしても、喉は強張って言葉にならない。


私はただ、玲司の背中を見送ることしかできなかった――。




……そして。


街灯の下、わずかに顔を覗かせたその影は、

私が決して忘れられない“ある人物”と同じ輪郭をしていた。




――まさか……あの人……


胸の奥で、心臓が悲鳴を上げるように打ち砕かれた。


お読みいただきありがとうございます。


第12話「沈黙の理由」では、

玲司がついに京司との関係を断片的に語りました。



けれどそれはほんの氷山の一角にすぎず、

核心はいまだ深い闇の中です。


そしてラストに現れた“影”。


サラにとって忘れられない人物の輪郭が重なり、

物語はさらに大きな不安と衝撃を孕んでいきます。



次回――


玲司が隠し続ける過去と、

サラ自身の記憶が交錯し、真実へと近づく

一歩となります。



続きが気になる方は、ぜひブクマ・感想で応援していただけると嬉しいです。


その一つひとつが、物語を紡ぐ大きな力になります。


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