表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/15

惨めな妻の終わり

はじめまして、作者のAvelinアヴェリンです。


裏切りから始まる、甘くて溺れるような御曹司ラブストーリー。

1話目は、主人公の人生が大きく変わる「惨めな夜」から始まります。


──雨音が、世界を包み込んでいた。

冷たい夜の闇の中、ふいに赤い傘が視界を覆う。


「……やっと見つけた。俺の子猫ちゃん」


低く、甘く、どこか危険な声。

月明かりに濡れた銀色の髪が、雨粒とともにきらめいた。

差し伸べられた手に触れた瞬間、心の奥まで熱が走る。


……でも、それは、この数時間前のこと――


廊下の角を曲がった瞬間、息が止まった。

夫が、見知らぬ女を抱きしめている。

「いつも可愛いな……食べちゃいたくなる」

「きゃあ♡……もぅ〜やだぁ」


その甘い声も、優しい笑みも――

私は一度も向けられたことがない。


(この女に……私は負けたってこと……なの?)


浮気相手は勝ち誇った笑みを浮かべ、

「奥さま、哀れね。愛されもしないのに、妻の座だけ必死に守って」


胸の奥が、ぐしゃりと潰れる音がした。

夫は、不気味に笑って――

「早かれ、遅かれ……だったんだろうな」


(あぁ……完全に終わったわね)


皮肉を吐き捨て、私は屋敷を飛び出した。


外は、冷たく重たい雨。

新品のヒールが濡れた石畳を叩く。

バキッ――


ヒールが折れ、赤い傘が転がり、

フリルのドレスは雨に濡れて重くなる。


(お気に入りの傘も、ヒールも、夫に買ってもらったドレスも……)

「どうして……こんなに惨めなの、私」


頬を伝うのは、雨か涙か、もうわからなかった。


「あんな奴……絶対に見返してやる」

「絶対に、愛に溺れさせてくれる相手を見つけるんだから」


足音が近づく。

次の瞬間、赤い傘がそっと差し出された。

「……大丈夫ですか?」


あたたかく、優しい声が胸にしみる。

顔を上げると、銀色の髪、スーツ姿の長い脚。


拾い上げられた赤い傘を差し出しながら――

彼は、私の目をまっすぐ見つめて微笑んだ。



「……やっと見つけた。俺の子猫ちゃん」



その声は、雨よりも冷たく、私の心を確かに掴んだ。

なのに──なぜだろう。背筋に、小さな震えが走った。



「もう、逃がさない」



傘越しに見た彼の瞳は、甘さの奥に何かを隠しているようで……。

私はその正体を、まだ知らない。



(──この出会いが、私の人生をさらに狂わせるなんて)


お読みいただきありがとうございます。

1話目は、惨めな妻の終わり――そして、運命の出会いのはじまりでした。

次回から、御曹司の甘くて危険な溺愛が始まります。


この恋の行方が気になる方は、ぜひブックマーク・感想で応援してください。

あなたの一つの反応が、物語をさらに甘くします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ