03話③:収穫祭②
「こらー、小桃ー、両手で持つなー」
「はーい、すみませーん」
昼休憩が終わり準備作業が始まって
…ものの数分で怒られた。
村長じゃなくて違う村人に。
昼休憩のとき、食事しながら村の人たちと
挨拶を交わして名前を覚えてもらったが、
みんなが名前を呼んでくれるのがなんだか嬉しい。
そして遠慮なく声を掛けてくれることに、
知らないうちに顔が綻んでしまう。
「リオナちゃん。一緒に椅子を運んでくれる?」
「うんっ。一緒に持つー」
しっかり働けないのは心苦しいが、
みんなに心配を掛ける訳にはいかない。
リオナと一緒に準備作業を手伝おう。
「テーブルと椅子はこんな感じかな。
あとは…おばさんたちに声掛けて料理を手伝おっか」
「えー、料理したことないー」
「ふふっ、リオナちゃん。
みんな最初は出来ないんだよ?
出来るからやるんじゃなくて、
やるから出来るようになるの。
お姉ちゃんと一緒にやってみよう?」
「うんっ!やってみる!」
リオナと手を繋ぎ、おばさん達の輪の中に入っていった。
〜〜〜
準備が一通り終わり村人たちと談笑していると、
私を呼ぶ声が聞こえた。
周りを見ると村長が手招きしている。
その横には今まで見かけなかった男性が一緒にいる。
村長のところに近づき、軽くお辞儀をする。
「初めまして。小桃です」
「初めまして。年に1〜2回ですがここに来ている商人です。よろしくお願いしますね」
「商人よ。なんでも小桃は"不老"らしいんじゃ」
「へー、不老……じゃぁ魔女さんか」
「ま、魔女!?」
「はい。妖しい魔法を使って若い姿を保つ魔女さんですね」
「私、魔法なんて使えませんし…
あ!魔女って言ったら森の奥に住んで妖しい鍋を煮込んで棒でかき回しながらイーッヒッヒッヒッて笑う人ですよ?」
「いやいや、そうとも限らないでしょう」
「…鼻がとんがってなくても?」
「とんがってなくても」
「……とんがり帽子かぶってなくても?」
「かぶってなくても!」
「………ほうきで空」「あんた魔女イメージどんだけ出るんだ!?!」
「あはははっ!村長さん、私この商人さん好き!」
「うんうん。金儲けしか考えんやつはキライじゃが人を笑わせられる商人はワシも好きじゃぞ」
「褒めていただいて嬉しいです」
商人は笑顔だった。
私はすごく楽しかったが、
商人も同じように思ってくれたみたいだ。
「では、私も品物を並べますのでこれで」
「うむ。また後でな」
商人は馬車の荷台に向かって歩いて行った。
そろそろお祭りが始まる。
どんなお祭りなんだろう。
楽しみだなー