03話①:村の母娘
ここで生活を始めて1日経った。
左手の痛みがひどく、ベッドに横になったものの
起きているのか眠っているのか分からないまま
気づいたら朝になっていた。
空腹はあまり感じないが喉が乾いた。
ふと台所を見ると飲水が入った壺が見えたので、
近づいて匂いを嗅いでみる。
無臭、たぶん大丈夫、神様は意地悪しないはず。
掬って飲んでみると普通に水だった。
良かった。大丈夫そう。今は…。
後でお腹痛くなったら神様を呪おう。
次に何をするべきか考えていると
入口の戸がノックされた。
「おはようございまーす」
誰か来た?
返事をしながら戸を開けてみると
女性と小さい女の子が2人で立っていた。
「あぁ、いたいた。おはようございます。
本当に女の子が1人で住んでるんだね。
昨日村長に食べ物と薬を持っていくように言われてね。
手の具合はどう?」
「ありがとうございます。
まだ痛みますけど、昨日より全然ラクです」
「それは良かった。
今日はちゃんとした薬を持ってきたから塗ってあげるよ」
お礼を言いながら2人を部屋に入れる。
椅子に座って手当てを受けている間、
小さい女の子は女性の腰にずっとしがみついていた。
チラチラこちらを見て、
目が合うと母親の身体に顔を隠す。
可愛いなぁ
「自己紹介もせずにすみません。
私、小桃って言います」
「あらあら、私もだったね。
私はユイナ、で、この子は娘のリオナです。
あと、畏まった口調はやめてね」
手当てが終わったので礼を言い、
リオナに近づいてしゃがみ込む。
「初めまして。こももって言います」
「…こ…もも…?」
「はい、こももです。よろしくね」
右手を差し出すと握ってくれた。
もぅ!可愛いなぁ!
「今日ね、村で収穫祭っていうお祭りがあるの。
よかったら一緒に来ない?」
「あぁ!ぜひ行きたいです。
昨日来てくれた村長さん?にもお礼を言いたいし」
「まだ小さいのにしっかりした子だね。
まだ準備してるだろうけど、ちょうどいいか。
今からでも大丈夫?」
「はい。お願いします!」
母親が立ち上がる。
私はずっと手を握ってくれているリオナと目を合わせる。
「お姉ちゃん、初めて村に行くの。
連れてってもらえる?」
「うん!ももねえ、連れてってあげる!」
ももねえ………
ーー何!?何この可愛い生き物!?
目がキラキラしてて黒目が大きくてずっとニコニコしててさっきから手ぇ握りっぱなしだし私何故か胸ドキドキしてるしこれが恋?そうなのねこれがこいねそれならしょうがないおかあさんこのこをわたしにくださいしあわせにしま(……って何を考えてるの私!?)
「…コホン、ありがとう!お願いね!」
私とユイナとリオナ、3人で村へと向かった。