02話②:不審な家
「まったく!一体何が住んでるんだ!!」
「うむ、勇ましいな。そろそろ背中を押すの止めろ。
痛くて敵わん」
…家は小さめ。一人なら住めるが
図体のでかいのには厳しめか?
ガタガタガシャーン
「「!?」」
何の音だ?
ここまで来たら正体を探るしかないが…
「おい!お前は…うん、そうか、その木が好きになったか。
逃げられんようにしっかり抱きしめるんじゃぞ?」
ようやく結婚相手が見つかったな。
相手は長命、お前が死ぬまで見守ってくれるぞ。
一歩も動けんがな。
さて、何がいるか分からんし戸も叩かん方がいいじゃろう。
「…誰かおるのか?…ぎゃーー!」
な、なんだ!血まみれの…娘?
包丁持ってやはり人殺しの類か!
……泣いとるのか?
今さら罪悪感に苛まれて苦しんどるのか!
……しゃがみ込んだ?
いよいよこっちに飛びかかっ
「ってなんじゃ!怪我しとるのか!
腹が減って指食おうとしたか?
おい!トウヤ!いつまで木と逢瀬を楽しんどる!
来る途中に生えとったヨモギごっそり毟ってこい!
…もう少しのガマンじゃ。
いま血止めの薬草持ってくるからな」
頷いたなら話はできそうか。
なんでこんな若い娘が一人でここに?
家の中は別に普通じゃが……
「おぉ、隨分沢山毟ってきたな、うんうん。
邪魔して悪かったな。しばらく二人きりにしてやるから
逢瀬を続けとれ」
…そうか、また抱きしめ直すほど本気で好きか。
なら何も言わん。お前にはな。
村に戻ったらお前の親に言っとく。
『お宅の息子は太くて硬くて長い娘が好きらしい』ってな。
悪意がある?そうじゃが?
「よくガマンしたな。これを巻けば少しは楽になるはずじゃ。
今日はこのままで、明日ちゃんとした薬を届けさせるからな」
頷きはするが、まぁこんだけ切ったら話す元気もないじゃろう。
「儂らはこの近くの村の者じゃ。
いきなり家が建っとって様子を見に来た。
しゃべるのはキツいじゃろう、
多くはしゃべらんでもいいが
少しだけでも話して貰えんか?」
うむ。少しは聞けそうじゃ。
にしても隨分痛かったか。
血と同じくらい涙も出とる。
〜〜〜〜〜
……信じられん話じゃ。
神様に言われて違うところから来た?
最近の神様は強制移住の仕事でもしとるのか。
ん?なに?浮浪?うむ、分かるぞ。
強制的にここに流れ着いたんじゃな。
えっ?ふろう違い?不老の方?
歳をとらんってすごいが、そんなもん確かめられんわ!
ん…?不老?隨分昔に聞いたような…
じゃが、それよりも………
「大体分かった。今日はこれで村に戻る。
若い娘の家に手を付けるのは心苦しいが
その手を見ると放っておけん。
眠れるようにベッドだけ整えさせてもらえんか?」
頷き…いや、お辞儀じゃな。
痛みが酷くてもちゃんとお礼が出来る。
それがわかれば十分じゃ。
ベッドを軽く整えて村に戻るとしよう。
「今日は村でいろいろあって世話ができん。
明日の朝に薬と食べ物を持ってこさせるから、
それまでガマンするんじゃぞ。
今度は指に齧りつくとか勘弁じゃからな」
…笑うと可愛い娘じゃな。
さて、村に戻るか。
「おいトウヤ!そろそろ村に戻るぞ!
お持ち帰りしたいんなら斧が要るじゃろ!」