02話①:村の村長
良い天気だ。
これなら今日の収穫祭、問題なくできそうだ。
「村長!」
声の聞こえた方を見ると村の入口からトウヤが大声で呼んでいる。
「なんじゃー?」
「ちょっと来てくださーい」
まったく!最近身体を動かすことにも苦労するのに、
年寄りをこき使いおって。
今日の準備で歩けんぐらいこき使ってやる!
「どうした?」
「あれを見てください」
あれは………家か?
「いよいよ目も悪くなった。村長の立場はお前に譲ろう」
「ヤですよ面倒くさい。じゃなくて、家ですよ。いつからあるのかわかりませんが」
「トウヤ、行って見てこい」
「…遠いな…こういうのは村長の役目でしょう、うん」
「残念じゃったな。不審な家が建ったら村長が調べるって掟はない」
「そんなピンポイントな掟どの村にもないですよ!」
「…正直なとこ、あそこまで歩くのはワシにはキツそうじゃ」
「確かにそうですね。しょうがない俺が行って…あ…」
「ん?どうした?」
「もし、悪い奴が住み着いたとしたら…」
「………」
「悪魔が住み着いて村の住人を殺そうとしてたら…」
「………」
「村長、一緒に行きましょう」
「お前、ワシを身代わりにして逃げる気か」
「……………イイエ」「今の間はなんじゃ??」
「いいから行きましょう。早くしないと準備に間に合いません」
「行かん!孫娘と遊ばにゃならんのじゃ!」
「そこは収穫祭準備って言いましょうよ。さぁ行きますよ」
「イヤじゃーーー!」
すまん、孫娘よ。
ワシの命はここまでじゃ。
頼むから毎週クッキーを買ってお供えしてくれ。