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01話③:転移
気がつくとそこは初めて見る部屋。
いわゆるワンルームタイプで、中央にテーブル。
左右を見回すとそれぞれにベッドと台所のようなものが見えた。
「ここが別世界?そういえばどんな世界か聞いてなかったな」
ふと、ドアが目に入った。
「外が気になるけど、先ずは生活基盤の確認!」
台所に立った瞬間、積み上がった木箱や鍋が大きな音を立てて崩れる。
ガタガタガシャーン
「ビックリしたー……あ」
驚いて左手をついた場所には包丁が。
小指をかなり深く切ったのか、舐めて直すには
一生かかりそうなくらい血が出ている。
…いや、噴き出ている。
「い…痛いイタいいタイ!お母さん!おかあさん!」
すぐ聞こえるはずの返事がいまは何故か聞こえない。
「ぐすっ……おかあさん…」
小桃は小指の激しい痛みによって
傍から母がいなくなったことに気付かされた。