06話①:告白①
小桃様がこの村に来てから20年が経った。
この村は特に変わったことがある訳でもなく、
毎年同じことを繰り返して生活するだけだ。
変わったこと…?オレが村長になったくらいだ。
だが、小桃様は毎日が楽しそうだ。
子供たちと遊びながら面倒を見て、
大人たちと一緒に汗をかきながら農作業をして過ごしている。
今は畑仕事の休憩時間。
小桃様は老婆を草の上に寝そべらせ、腰を揉んでやっている。
優しくて、面倒見が良くて、明るくて、
そして、可愛い…。
……オレもそろそろ所帯を持ちたいと思っている。
いや、持たなければいけない年齢だ。かなりヤバいくらいだ。
村の女たちからは温かい目で見られていて、
なんとなく良く思われている雰囲気があり、
オレが決めさえすればすぐ結婚出来ると思う。
思うが…オレには小桃様しか目に入らない。
小桃様と結婚したら、毎日楽しいだろうな。
………そうか、オレは小桃様が好きなのか。
〜〜〜
「小桃様ー。ジャガイモ持ってって食べてー」
「ありがとうー。わっ、こんなにいっぱい、重そう…」
「オレが持って行ってやるよ」
「村長さんありがとう。
すごく重そうだから遠慮する気にならないや。
よろしくお願いします」
「おぅ、任せとけ」
頼りになるところを見せつつ小桃様と話が出来る。
完璧な作戦d…結構重いな、これ腰にくるぞ。
〜〜〜
小桃様の家に向かいながら、元々いたところの話を聞いた。
…一晩中明るい?
…捻ると管から水が出る??
…鉄の塊が走ったり飛んだり???
作り話としか思えないが、ポンポン出てくる様子を見ると本当らしい。
一体どんなところなんだ。
神の国としか思えない。
話しながら歩いているうちに家に着いてしまった。
「村長さん、ありがとうございました。
ここに置いてもらえればあとは大丈夫です」
「あ、あの…小桃様」
「…?はい」
家の前で立ち止まる。
ーー今は二人きり、言うなら今が絶好のチャンス!
緊張で口が渇くのを感じながらなんとか言葉を出す。
「…好きです…」
「……はい?」
「好きなんです!」
聞き取れなかったようなので大声でもう一度伝えると、
小桃様はオレの言葉が理解出来たのか
顔を赤らめてモジモジしている。
「…あの……急に言われても…困ります…」
「自分の気持ちに正直でいたいんです!好きなんです!」
「……はい。知ってました…」
ーー知ってた!?
ポーカーフェイスだと思ってたのにバレバレだったのか!?
「い、いつから…?」
「ずっと前からです。村のみんなも知ってます」
…オレ自分の気持ちに気づいたのさっきなんだけど。
っていうか村のみんなも知ってる!?
気づかないうちに目で追っていたのかオレ?
「こういうことには理解があると思ってます。
"推し"を思う気持ちは尊いものです。
それがどういう形であっても、絶対に否定してはいけないんです!」
…ん?何を言って…?
「私は家に入りますので、どうぞごゆっくり…」
「ちょっ!ちょっと待ってくれ!小桃様は何を言ってるんですか?」
「えっ?あの娘(木)が大好きなんですよね?
前の村長さんから聞きましたよ?」
そんちょーーーー!!!
あんたなんてことしてくれてんだ!
20年後に発動するトラップだと!?
どんだけ根に持ってたんだよ!
前村長の笑い声が聞こえた気がしたがそんなのはどうでもいい。
今は目の前で温かい目を向けてくる小桃様を何とかしなければ!




