05話③:新規開拓①
私がこの村に来てから3年経った。
収穫祭も終わり、冬越えの準備も落ち着いたある日、
私は村から近い原っぱに立っていた。
もう胸を張って『村の一員だ』と言えるくらい、村の生活に慣れたと思う。
そして今日、それがさらに膨らむかもしれないことを始める。
期待と不安と緊張がすごい。
でも、…失敗したところで「ダメでした〜」で済む話だ。
楽しみながらやってみよう!
私は村の広場へと歩き始めた。
手に、先日商人から受け取った布袋を握りしめて。
〜〜〜
「みんな、おはよう」
「「「おはよーー!」」」
「今日は遊ぶんじゃなくてお姉ちゃんに手伝って欲しいんだ。いいかな?」
「「「いいよー」」」
「まずは、村中の家を周って"灰"を集めてほしいの。
竈や囲炉裏から集めて、袋とか桶に入れてきてね」
「「「はーい!」」」
私も桶を持って目についた家を訪ねる。
「灰くださーい」
「はい??」
「ありがとうございます」
灰をもらう前に、欲しい返答をくれたお礼を言う。
目的の灰を受け取って、すぐ隣の家を訪ねていく。
使う目的とは別に家の掃除も出来るから一石二鳥だ。
桶がいっぱいになったので広場に戻ると、子供たちも集め終わったのか広場で待っていてくれた。
「ありがとうね。集まった?」
「うん。いっぱいだよー」
「じゃ、次は原っぱに行きまーす」
集めた灰を持ち、子供たちと原っぱに向かう。
次は肉体労働だけど、子供たちに手伝ってもらえばなんとかなるはずだ。
〜〜〜
来る途中、目印に使えそうな枝を4本子供に拾ってもらって原っぱに着いた。
「次は何するのー?」
「村長さんから許可もらってね、ここに畑を作ります」
「えー?畑って作れるの?」
「手間がかかるけど作れるんだよ?
ここはね、みんなで"最初に"畑にする場所になるの。手伝ってね」
「なんか楽しそう!何すればいいの?」
「目印付けるからちょっと待ってて。
…あ、ここダメだ」
「ももねえどうしたの?」
枝で四隅を囲おうとしたが、その中にピンク色の小さな花が咲いているのを見つけた。
「ほら、カワラナデシコが咲いてる。この花一番好きなの」
「ホントだ!可愛い!」
花を囲わないようにして枝をずらして地面に突き立てる。
「この4本の枝の中の草をむしって。
急がなくていいから、しっかりと根っこから抜いてね」
「「「わかったー」」」
大体3メートル四方の範囲を畑にするつもりだ。
本当はもう少し広くしたいが、草の量に心が折れた。
失敗するかもしれないし、このくらいがちょうど良いのかもしれない。
子供たちがしゃがみ込んで草むしりを始めたので、私もむしり始める。
「…ももねえ、この草…んっ!…抜けないよー」
「ボクがやる!…ほら抜けた。抜けないのあったら教えて!」
「あ…ありがとう…」
…あら…あらあらあら!
2人とも顔を赤くしながら草をむしってる。
…可愛いなぁ
こうやって幼馴染がお互いを意識し始めていくのね。
でもダメ。リオナは私のものです。
〜〜〜
かなり時間が掛かってしまったが、なんとかお昼前に枝で囲った部分の草むしりが終わった。
ようやく終わった。
まだ次の作業があるが、1つずつ作業が片付いていくと安心する。
そろそろお昼だし帰らなきゃ。
…ふと見ると、リオナとさっき声を掛けていた男の子が
カワラナデシコの周りの草をむしっていた。
ーー優しい子なら、許してやらんでもない!




