03話⑤:村の会議
小桃が家に帰ったあとーー
収穫祭の賑やかな空気が収まった広場に
村の大人たち全員が集まっていた。
「……で、どうじゃった?」
「問題あるようには見えなかったな」
「問題どころか…すごく良い子だったよ!」
「うんうん。優しいし気遣い出来るし、それに、すごく明るい!」
村長の問いかけに村人たちが答える。
…いや、話したくてウズウズしてる、そんな雰囲気すら感じる。
それだけ"小桃"が好印象だったのだろう。
自分の"人を見る目"が間違いなかったことに安心しつつ、話し始めた。
「祭りの時に聞いとったと思うが、明日からあの娘もこの村の1人として働く。みんなもよろしく頼むぞ」
「「「おう(はい)」」」
「オレがしっかり面倒みてやるぜ!」
「お前は若い子が好きだからな」
「お前もだろ?」
「「「あっはっはっはっ」」」
「それと…………」
「「「!」」」
村長の不意の沈黙に、村人たちの間の空気が張り詰める。
「…あの娘の言うことが正しいなら……
ワシの考えが合っとるなら……
あの娘は苦労する。
ワシらが想像もできんくらいに…」
ポツリポツリと零れる村長の言葉を
村人たちは一言も聞き漏らさない。
「みんなもよく見てやってくれ。
悪いことをせんように、じゃない。
"よく"見てやってくれ。
…あの娘は…小桃はこの村の"宝"になる。
そんな気がするんじゃ。
……村長の命令じゃない。
ワシからの、"お願い"じゃ」
どういう意味かは分からない。
ただ、初めて聞く村長の物言いに
よほどの意味が込められていることだけはわかる。
村人全員が無言で頷いた。
「さぁ、これで終いじゃ。
明日から畑の後片付けと冬越えの準備も始まる。
よろしく頼むぞ」
解散となり、全員が家に帰っていく。
柔らかい月明かりに照らされながら、
村長も妻の手を引いて家路に着いた。




