03話④:収穫祭③
「みんな!今年の収穫も無事に終わった!
1年頑張ったことを誇り、
収穫できたことを喜び、
また来年もこの時が迎えられるよう願おう!」
村人全員、右手を胸に当てて静かに村長の挨拶を聞く。
私もみんなと同じように右手を胸に当てる。
昨日きたばかりなので村人たちと同じ苦労はしていないが、
来年の収穫祭をみんなと迎えることを願いたい。
目を瞑り、真剣に心の中で思った。
「さぁ!収穫祭の始まりじゃ!
飲んで食って騒げ!」
少し乱暴にも聞こえるが、
村長さんが優しいのはもう知っている。
着飾った言葉ではないのが逆に気持ちよく感じた。
大人たちはコップにお酒を注ぎ始め、
子供たちは商人さんの出店に走っていく。
おばさん達に混じって準備していたときに聞いたが、
祭と言っても大きな町のような"特別な催し"はないらしい。
ないらしいが……でも、なんか良い。
なぜそう思うのか考えていると、ユイナが近づいてきた。
「小桃ちゃんお酒飲めないよね。
果実水あるから飲んで飲んで」
「あ、ありがとうございます!」
少し黄色っぽい液体の入ったコップを受け取り、一口飲んでみる。
…うん。現代日本で暮らした身体には甘さが物足りない。
でも、素朴な甘さが身体に染み渡るみたいで、すごく美味しい!
「小桃!今年のジャガイモは出来が良かったんだ。
これ食ってみろ!」
「山葡萄のジャム作ったからパンに付けて食べてね」
「人参は毎年不作なんだけど、美味しく漬かってるから食べてみて」
気が付くとお皿を持った村人に囲まれていた。
「はい。いただきま…いやいやそんなにいっぱい食べられません!」
持ち上げたお皿に料理が山のように盛られていく。
…がんばって食べなくちゃ。
お昼に食べて気づいたが、野菜の味がすごい。
味付けは薄いのに野菜そのものの味が強く、
今まで食べてきたのは何だったのかと思う。
村人たちの"気持ち"が野菜にも込められているのだろうか。
食べるだけで元気になる、そんな気がする。
食べながら周りを見ると、商人の出店に村長がいるのが見えた。
両手いっぱいに持っているのは…クッキー?
あんなにいっぱい、誰が食べるんだろう…
あ!私も出店の品物見てみたい!
行ってみようっと。
〜〜〜
日が傾いてもうすぐ夕方になる頃、
収穫祭は終わりとなった。
明日からのことを聞いて、家へと向かう。
道すがらに思い出す。
…村の人たちみんなが笑顔だった。
特別なことは何もなかった。
でも、みんなが楽しそうで、それで私も楽しくなって。
いいなぁ
心が温まるのを感じながら、私は歩いていた。
来年も、再来年もーーこんなふうに笑っていられたらいいな。




