受験
わたしは、高校受験を向かえた。
私立の高校だった。
親心なのか恥なのか?分からないが公立高校のヤンキーが集まる高校は避けてくれたらしい。しかし、ここを落ちたら定時制か通信制高校。ハッキリ言って自信なんて無い。明宏も今は光子と滑り止めのレベルが高い私立を受験してるだなと思うと落ち込んだ。
席に座った。緊張で頭の中が真っ白だった。
「今井さん。」
なんと明宏が隣の席に座っていた。
高校を間違えたと思って席を立とうとしてしまった。
「今井さん。落ち着いて俺が教えた公式を思い出して。」
明宏の、爽やかな笑顔を見てわたしは落ち着いた。やっぱり明宏の隣の席は落ち着く。苦手な数学も英語も良く分かる。解ける!後は暗記物だ。わたしは集中した。見直す余裕さえ、あった。全科目のテストが終わった。明宏は、わたしを見て喜んでいる様子だった。
帰り道 、
「十勝君何で?」
とわたしは横を歩いている明宏に聞いた。明宏は、嬉しそうにわたしの右耳に優しく触れた。
「俺は、今井さんの右耳が好きでこの高校を受験したんだよ。」
とわたしには意味不明な言葉で説明した。わたしは、不覚にも泣いてしまった。
「ごめんなさい。十勝君。」
「分かってるよ。」
明宏は、わたしを抱きしめてくれた。ずーっとこの瞬間を待っていた。




