【ホラー?】夏の夜に出る黒い影
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
実家の和室で寝転がっての読書は最高だ。思わず一句浮かびそう。
畳部屋、鼻に染み入る、いぐさの香り。
うーん、字余り。
「アンタ休日だからって昼からぐーたらして! 掃除の邪魔よ」
至福の時間を堪能していたら、突然母が乱入してきた。
今いいところなのに……。
「も~掃除なら後で自分でするから、たまの帰郷くらいゆっくりさせてよ」
「ならせめて隣の部屋に」
「ヤダ、絨毯より畳の方が好きだし」
即答。母はやれやれと嘆息する。
「ったく……知らないよ? そんなところで寝てたら」
「今は夏だし、風邪なんか引かないでしょ」
「じゃなくて……出るよ? この部屋」
「え?」
……マジで? うち、いつの間に心霊スポットになってたの?
「ちょっと……冗談はやめてよ」
「本当よ。昨日の夜もいたんだから。……そう、ちょうどアンタが今寝ている辺りに、ね」
日も落ち、薄暗い明かりの下、母が不気味な口調で語りだす。
窓から入り込んだ冷気が、後ろから私の首筋を撫でる。
遠くでカラスが鳴き、呼応するように母の口が、ヒヒ、と歪んで、
「……黒光りした影が、カサカサと」
「ひぎゃぁぁあああ!?」
私は全力で飛び起きて後退る。
幽霊なんかよりよっぽど肝が冷えた。
【お題:いぐさ、肝、絨毯 テーマ:ホラー風味なG 文字数:500文字】