【青春】絶望の3km
教室の窓から眺める空は透き通るような青色だった。
一点の曇りもない清々しい東京の冬日和。
――最悪だ。
なんで関東の冬は毎年毎年バカみたいに晴れるんだ。
いっそ猛吹雪かどしゃ降りにでもなればいいのに。
「おい高橋聞いてるか? よそ見すんなよ」
教師が私を名指しで注意してくる。
周囲からはクスクス笑い。
けど、聞いてるわけないだろ。
次の授業は体育、つまりマラソン練習なんだぞ。憂鬱すぎて授業なんか集中できるか。
グラウンドからは呪われた魔笛の音が響く。
時計の針が進むたび、私の心が重く、暗く曇っていく。
今日も始まるのだ、狂気の時間が。
たかが3km。私にとっては地獄の18分間。
極寒のグラウンドに半袖ハーフパンツ姿で放り出され、10分以上も肉体的苦痛を受け、タイムという名の力量を強制的に吐かされる。
これを冬の間、何度も何度も繰り返す。
もはや拷問以外の何物でもないだろ。
「よし、では今日の授業はここまで」
ついに授業終了のチャイムが鳴る。
絶望の中、重い腰を上げて更衣室へと向かうクラスメイト達。
ああ、このまま記憶が消えて、目覚めた時には走り終わってればいいのに。
拝啓、一時間後の私へ。
お願いだから早く私を迎えに来てください。
【お題:曇り、笛、記憶 テーマ:体育のマラソン 文字数:500字】