【その他】その日俺は思い出した。ヤンデレに睨まれる恐怖を。
「なんであんな女連れてきたのよ」
自宅のリビングで、俺は冷や汗をかきながら正座していた。
妹の視線が冷たく突き刺さり、身体が硬直する。
「まさかあの女、お兄ちゃんの彼女なの?」
「いや……あの、その」
「……別れてよ」
「そ、れは……」
「早く別れてって言ってんのッ!」
妹の激昂に、ビクリと肩が震える。
さっきチラつかされた包丁の刃が脳裏に焼きついて離れない。
俺が甘かったんだ。
ヤンデレがこんなに恐ろしい存在だったなんて、知らなかった。
「でも、俺だって可愛い彼女、欲しかったし……」
「ふぅん、この期に及んでまだそんなこと言うんだ」
「ゆ、許してくれ! 怖いよ、俺……!」
「ふざけないで!」
俺の弁明に妹が叫ぶ。
その目には恐怖で涙が溜まっていた。
「お兄ちゃんより私の方がはるかに怖いんだからね!!」
「ですよねぇ!」
そりゃそうだ! 兄貴がガチのヤンデレ彼女連れてきたら普通キレるよね!
血の繋がってない美少女の妹とか、真っ先にぶっ殺される対象だもんねぇ!
「どうすんのよ! さっきのアイツの目、本気で私を消ーー」
『ケン君、その女…………誰なの?』
「「ひぎぃいいっ!?」」
ドアの隙間からギョロリと覗く眼光。
俺と妹は恐怖で肩を抱き合った。
【お題:特になし テーマ:ヤンデレ 文字数:500字】