【ハイファンタジー】毒草の売り方
露店が並ぶ植物市場は今日も賑わっていた。
薬草の香りが漂い、人々の活気ある声が響き渡る。
その片隅に一軒、寂れた妖精の店がポツンとあった。
そこへ行商人の男が通りかかり、首を傾げる。
「なぜ売れもしない毒草ばかり並べているのだ?」
「これ、人間には毒なんですか? こんなにキレイなのに……」
「知らなかったのか? どれも薬にもならん役立たずだぞ」
「そう、なんですね……。私の大好きなお花だから、皆に喜んでもらえると思ったのですが」
妖精の店主は寂しげに俯くと、花を一本一本、名残惜しそうに片付けていく。
「捨てるのか?」
「捨て……たくないです。でも売れない商品を出しておく余裕はないので」
「なら俺に譲ってくれ」
「いいですけど、どうして?」
「嬢ちゃん、商売のコツってのは、その商品の特徴を推してやることなのさ」
背中のカゴいっぱいに毒草を詰めた男は、いい仕入れができたと満足げに笑う。
それは決して慈善活動ではない。
「要は売り方だよ。こんなに美しくて、しかも毒草なら虫も鳥も寄りつかん。観賞用として物好きな金持ち共に高く売れるわい、ニヒヒ」
男は立ち去り、店主は茫然と見送る。
のちに貴族の間で毒草ブームが巻き起こるとは知らずに。
【お題:毒草 テーマ:短所は長所 文字数:500文字】