【日常】国語の宿題には別解がある
子どもの発想力には、時として大人のソレをはるかに凌ぐ奇抜さがある。
小学校の教師である私には、それが嫌というほど身に沁みているのだ。
「……ねぇソウ君。先生はね、国語の宿題を出してって言ってるのよ?」
「うん! だからコレ! ちゃんとやってきてえらいでしょ!」
そう言って目の前の男の子が教卓に置いたものは、植木鉢だった。
もう一度言おう。植木鉢である。
中はぎっしりと土が詰まっている。
「あのね、先生が言う宿題って、月曜日に配ったプリントのことなんだけど」
諭すように話しても、男の子の頭には「?」が浮かぶばかり。
「ねぇ聞いてる? 先生はプリントを」
「だからコレ! この中に入ってるの!」
私が怒り出すより先に、男の子の方が逆ギレしてしまった。
彼は一体何を言いたいのだろう。
「この中って、土しか入ってないじゃーー」
と、植木鉢を掘り起こしてみて、私は「あっ!」と叫んだ。
納得すると同時に、頭を抱える。
なるほど、この子は宿題をキチンとやってきている。……物理的に。
中から出てきたのは小さく折り畳まれた白紙のプリントだった。
それを広げると、私が出題した問題文がはっきりと記されていた。
『問.次の文章を読んで、空欄を埋めなさい。』
【お題:男の子、植木鉢 テーマ:穴埋め問題、土に埋める 文字数:500字】




