【青春】病み上がり 友と雪道 ラーメン屋
病院を出ると、雪が降っていた。
数ヶ月ぶりの外の景色は真っ白に様変わりしていて。
入院前とは別世界に降り立ったように感じる。
(……誰もいない、か)
駐車場には車が複数止まっていたが、家族や親戚のものはなかった。
見舞いも迎えも期待してなかったけど、現実を目にするとため息が出る。
(相変わらず自分の子の病気にも無頓着なんだな。ま、別にどうでも)
「間に、合っ、たぁぁっ!」
突然、聞き覚えのある声が駆けてきた。
入院中の面会で、親の声より聞いた友人の声。
「どうしたのルカ!? 汗だくじゃないか!」
「ゼハ……ゼハ……ッ! 今日、ヒカルが退院、って言ってた、から……迎えに、行こうと、思って……!」
「落ち着きなよ。ふふっ、これじゃどっちが病み上がりか分からないだろ」
まさか雪で自転車に乗れないからって、走ってきたのか。
ルカは呼吸を整えると、顔を上げて笑った。
「ヒカル、腹減ってるか? 退院祝に行こうぜ、いつものラーメン屋!」
退院と言っても完治したわけじゃないんだけどな。
でも、今だけは不健康な気遣いが嬉しかった。
「いいね。正直、病院食には飽きてたんだ」
歩き出すと、積もった雪に二人分の足跡が残る。
それがボクの心には暖かかった。
【お題:ラーメン屋、駆ける テーマ:雪道を親友と二人で歩くシーン 文字数:500字】