【ハイファンタジー】雲海船の旅
「本日も晴天なり! 波も穏やか、実に良い航海日和じゃ!」
「雲の上ですからね。そりゃ毎日晴れるでしょうよ」
雲海に浮かぶ船の上、俺の隣で船長が笑う。
天空都市を旅立って早一週間。
景色は白と青が果てなく続くばかりで、フロンティアは未だ見えない。
てか本当にそんなものあるのか?
ただ船長の放浪旅に付き合わされているだけな気もする。
「今日こそ辿り着くぞ、伝説の宝が眠る霊峰の頂へ! 全速前進だ!」
「あ、そっちは高気圧が広がる予想なんで無理っすね。午後には雲無くなるっす」
「なぬ!?」
俺の進言を受け、船長は天気図を広げて、ぐぬぬと唸る。
「仕方あるまい、迂回して進むぞ! 面舵いっぱい!」
「へい。そんじゃ他の船員にも伝令を」
「返事は『宜候』だ!」
「……ヨーソロー」
さっきから海軍っぽいセリフ言いたいだけだろコイツ。
こんな調子で一体いつになったら目的地に着くのやら。
「んじゃ伝令はしとくんで。後の引継ぎはお願いしますね船長」
「む? どこへ行く気だ?」
「昼寝っす」
ま、案外嫌いじゃないけどな、この船旅。
こんないい天気なのに甲板に出ないのは損だよな。
今日も雲海船は流れる雲に身を任せる。
俺は一人甲板で寝転がり、ゆっくりと目を閉じた。
【お題:雲、伝説 テーマ:空の船旅 文字数:500字】




