【ダーク】等価交換 ※残酷な描写あり
山小屋の扉を開けると、そこは廃墟同然だった。
生活感はなく、あるのは古びた机と棚に、謎の物品の数々。
「ここか? 裏市場の売人がいるって噂の山小屋は」
「人聞きが悪いねぇお客さん。商売に裏も表もあるかよって」
男が呟くと、部屋の奥から薄汚い老人が現れた。
老人はケケケ、と嗤い、手を払うように振る。
「悪いが、うちは一見さんお断りなんだ。闇社会のお仲間さんにでも紹介状もらってりゃあ別だが」
「それならある」
「……ほう?」
男が提示した紙を見つめ、老人は満足げに頷いた。
それが精巧に作られた偽造書とは気づかずに。
「クク、結構。で、何が欲しいんだ? 盗品に違法薬物、何でもあるぜ」
「全部だ」
「おいおい正気か? 取引には相応の対価の支払いが必要だ。本当に払ーー」
直後、銃声とともに老人の頭部から血飛沫が舞った。
老体が崩れ落ち、男が鼻を鳴らす。
「取引成立だな。鉛玉1つと、この小屋にあるモノすべてだ」
男は銃をコートの裏に仕舞うと、その手で無線機を取り出した。
「こちらウルフ。山小屋には誰もいないようだ。これよりブツをあるだけ回収し帰還する」
そして、男は死体とスコップを担ぎ、一度山小屋を後にする。
“消えた存在”を隠蔽するために。
【お題:山、裏取引、消えた存在 テーマ:命と引き換え 文字数:500字】




