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【ハイファンタジー】パン屋のおばちゃんの嘆息

 失敗した、とパン屋のおばちゃんはため息をつく。

 まさか自分の手作りパンがここまで子供達の胃袋を掴むとは思わなかった。

 ましてやそれを巡って毎日戦争が起こるなど、誰が想像できようか。


 時計の針が12時を示し、昼休みに突入。

 途端、校舎のあらゆる窓から悪魔の生徒達が一斉に飛び出し、彼女の元へと殺到する。


「おばちゃん! オムそばとメンチとカレー3つずつ――ぅごぁッ!?」

「どけ! そのオムそばとカレーは俺のモノ熱っづぁ!」

「ちょっと! アタイの方が先に並んでたろ! 消し炭にされてぇか!」


 異形の生徒達が我先にと現れては、次々と場外へ姿を消していく。

 が、その程度で懲りる奴など、この学校には一人もいない。

 再び最前線に割って入ると、別の誰かをなぎ倒す。

 こうして争奪戦の永久機関は完成するのだ。


 おばちゃんは二度目のため息をつく。

 こうなれば強硬手段。

 背後から闇色の手を無数に伸ばし、生徒達を無理やり一列にさせた。


「「「ギィャァァあああ!」」」

「お行儀よく並びな。素行の悪い子はたとえ客でも許さないよ」


 なんて言いつつ、どうせ翌日になれば懲りずに闘争を押っ始めるのだ。


 おばちゃんは三度ため息をつく。

 悩みの種は当分解消されそうにない。

【お題:戦争、悩みの種、悪の小学校 テーマ:よくある総菜パン争奪戦 文字数:500文字】

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