【ラブコメ】無意識の催眠術
視界の中で五円玉が揺れる。
俺の意識を混沌へ陥れようと、ゆらり、ゆらりと。
「……あなたは段々、私の言うことを聞きたくなる、聞きたくなる……」
いや、ならないが?
幼馴染が「試したいことがある」とか言うから付き合ってはみたが、現代で催眠術をまだ信じる奴がいるとはな。
まあ、わざとかかったフリでもしてみるか。何となくそんな気分だし。
「……どう? 私の言うこと、聞きたくなった?」
「なったぞ」
「……じゃあ、試しに三回廻ってワンって言って」
「(グルグルグル)ワン」
「……次、私に告白してみて」
「好きだよ、マナ」
ちなみにこれは嘘じゃないぞ。友達として。
「っ……! じ、じゃあ今日私とデートの約束して。映画行って、ご飯食べて、あとお買い物も」
「いいぞ」
「……ほ、ホントに!? お金ないって言ってたのに」
「昨日バイト代入ったしな」
あれ? でもそもそも何で金貯めてたんだっけ?
買いたいゲームがあった……気がする、けどいいや。
なんか頭ボーっとするし、あとで考えよ。
「……や、やった! じゃあ準備してくるから待ってて!」
なんてはしゃぎながら、マナは自分の家へと戻っていった。
ったく、かわいい奴め、本当に催眠術が効いたと思ってんだろうな。
【お題:五円玉 テーマ:閾下洗脳 文字数:500文字】




