【ラブコメ】強制的つり橋効果
「先輩は弁慶と牛若丸の逸話をご存知ですか?」
大自然に囲まれた森林公園。
目の前の先輩は今にも崩れそうなほど足をガクガク震わせている。
「常勝無敗だった弁慶が橋の上で牛若丸との戦いに敗れ、それ以降家来になったって話です。今の私達の状況にそっくりと思いませんか?」
「ま、待て! 来るな……!」
一歩、また一歩と私が歩み寄るたび、先輩の顔が恐怖に歪む。
試しにドンッ、と強めに足踏みしたら、面白いほど悲鳴をあげた。
「アハハ、可愛いですね。ここに来るまではあんなにイキってたのに」
「こっ、降参だ……! 認める! この度胸試し、お前の勝ちを認めてやる! だから助け――」
「なら私の家来になりますか? というか」
私はいたずらっぽく笑って告げる。
ただの主従関係だけじゃつまらないもんね。
「好きです、先輩」
「は? ……はぁ?!」
「付き合ってください。そして私の尻に敷かれてください。家来のように」
胸に秘めた想いを、思い切って打ち明けた。
――渓谷の上空150m、軋むつり橋の上で。
「嫌に決まってるだろ! この悪魔ああああやめてやめて! わかったからジャンプしないでぇ!」
そして私は先輩への告白成功を見事勝ち取ったのだった。
つり橋効果って凄い。
【お題:橋、主従関係 テーマ:脅迫 文字数:500字】